短編夢小説T

□鈍感なのは罪ですか?
1ページ/2ページ

「あれ・・・クッキーの材料が切れちゃった」





恵梨華は冷蔵庫の中を覗きながら言った。





小さくため息をつくと、恵梨華は街へ出かける準備をした。





「それじゃあアンダーテイカー、ちょっとクッキーの材料を買いに行って来るね!」





恵梨華は仕事中のアンダーテイカーに声をかけ、出かけようとした。





するとアンダーテイカーは作業を中断し、慌てた様子で恵梨華に駆け寄った。





「それなら小生も一緒に行くよォ〜」





後ろから恵梨華を抱きしめた。





「仕事・・・まだ終わってないんでしょ?」





「小生は恵梨華と買い物に行きたいのさ」





「途中でやめたら”お客さん”が可哀相でしょ・・・」





「・・・恵梨華は小生と一緒に買い物したくないのかい?」





アンダーテイカーはその場にしゃがみ込み、袖で顔を覆ってわざとらしく泣いたフリをしている。





「はぁ・・・じゃあ一緒に行こうか・・・」





恵梨華は呆れた様子でアンダーテイカーを見た。





最近アンダーテイカーの様子がおかしかった。





以前はそんな事なかったのだが、シエルのお茶会に呼ばれた時も慌てた様子でついてくる。





買い物だって前は一人で行かせてくれたのに、今は必ずついてくる。





「(アンダーテイカー・・・どうしちゃったのかな・・・)」





恵梨華はそんなアンダーテイカーを少し心配していた。





「さあ、楽しい楽しい買い物に行こうねェ〜♪」





上機嫌なアンダーテイカーは鼻歌を歌いながら恵梨華の手を握っている。





「えーっと・・・これとこれとこれください」





恵梨華はメモを片手に、欲しいモノを店員に伝えた。





「はい、こちらでございますね」





店員は笑顔で恵梨華の言った物を手渡した。





「いつもありがとうございます」





丁寧にお辞儀をする店員。





恵梨華は軽く会釈すると、そのまま帰ろうとした。





しかしアンダーテイカーは恵梨華の手を握ったまま、動こうとしない。





不思議に思った恵梨華は、アンダーテイカーに声をかけた。





「アンダーテイカー?どうしたの?」





恵梨華がアンダーテイカーの顔を覗き込むが、アンダーテイカーは店員を見つめたままだった。





「あ、あの・・・どうかされましたか?」





店員は少し怯えた様子でアンダーテイカーに問いかけた。





アンダーテイカーはそんな店員をギロリと睨みつけた。





「この子は小生の恵梨華なんだ。君のモノにはならないよ?」





「なっ・・・!」





恵梨華の頬が赤く染まっていった。





「す、すみません!なんでもないんです!ほら!行くよ、アンダーテイカー!」





恵梨華は恥ずかしくなり、無理矢理アンダーテイカーを引きずってその場を去った。





その店が見えなくなったところで、荒々しくアンダーテイカーを離した。





「ちょっと!何であんな事言ったの?!」





「・・・・・・」





アンダーテイカーは口を尖らせ拗ねた様子で黙っていた。





「あんな恥ずかしい事するならもう一緒に買い物行かないよ!?」





恵梨華は眉を寄せながら怒鳴った。





すると黙っていたアンダーテイカーが、小さな声で呟いた。





「・・・あの子は恵梨華に気があるんだよ」





「はぁ?何言ってるの?」





「君に向けた笑顔が何よりの証拠さ」





「あんなの営業スマイルでしょ・・・」





「(恵梨華は気づいていないだけなんだよ・・・)」





アンダーテイカーは心の中で深い深いため息をついた。





「とにかく、もうあんな恥ずかしい事はやめてね」





「・・・わかったよ」





アンダーテイカーはしぶしぶ受け入れて恵梨華の手を握った。





帰り道、恵梨華とアンダーテイカーが歩いていると、小さな男の子が話しかけてきた。





「あ・・・葬儀屋さんだ!」





前にアンダーテイカーがこの子の父親の葬儀をしてあげたことがあった。





「おやおや・・・君は確か・・・」
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ