短編夢小説T

□イケメンは何でも似合う
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ドクンッ・・・―





高鳴る心臓。





恵梨華は目の前のアンダーテイカーを見ると、ゴクリと生唾を飲んだ。





「(似合うよ・・・カッコよすぎるよアンダーテイカー・・・!)」





ハァハァと息を荒くする恵梨華。





口端からはだらしなく涎が垂れていた。





そんな恵梨華の異変にアンダーテイカーが気が付いた。





「ど、どうしたんだい?」





少し戸惑いながら、不思議そうに恵梨華を見ていた。





「な、何でもないよ・・・!」





恵梨華は慌てて顔を背けた。





不審に思いながらも、アンダーテイカーは再び読んでいた本に視線を落とした。





カチャリ・・・





無意識のうちにかけている眼鏡を直す。






「(ヒィィィィ!!!)」





そんなアンダーテイカーを見ていた恵梨華は、思わず心の中で叫び声をあげた。





「(だ、だめだ・・・眼鏡をかけてるアンダーテイカーやばい・・・!)」





必死に心臓に手をあて、呼吸を整えようとする恵梨華。





「(そうだ・・・!これはセバスチャンに写真をとってもらおう!そしたら気づかれずに・・・ぐふふ)」





嗚呼、これではただの変態である。





恵梨華は慌てた様子で出かける準備をした。





そして忍び足で店を出ようとする。





「どこに行くんだい?」





アンダーテイカーの声にビクリと反応する恵梨華。





「ちょ、ちょっと買い物に・・・」





冷や汗がタラタラと流れる。





動揺して声が裏返ってしまった。





「・・・怪しいねェ〜?何か企んでいるのか〜い?ヒッヒッ」





「や、やだなぁ!そんな訳ないじゃないですか!アハハ!」





何故か敬語になってしまった恵梨華。





アンダーテイカーは恵梨華を疑いの眼差しで見ていた。





「す、すぐ戻るよ、うん!」





恵梨華は慌てて店を飛び出した。





「ハァ・・・ハァ・・・」





店から少し離れたところまで全速力で走っていた為、呼吸が荒い。





恵梨華は木の端に座ると、呼吸を整えるように大きく深呼吸した。





だいぶ落ち着いてきた恵梨華は、ファントムハイヴ邸へと向かった。





「(・・・いつ見ても大きいお屋敷だなぁ・・・)」





恵梨華は門の前でお屋敷をまじまじと眺めていた。





すると、どこからともなくセバスチャンが現れた。





「これはこれはお嬢様、本日は歩いてここまで?」





「え・・・う、うん」





「電話してくださればお迎えにあがりましたのに・・・」





セバスチャンは少し困った様子で首を傾げた。





「ちょっと事情があってね。それよりセバスチャン、お願いしてもいい?」





「お嬢様の愛を頂けるのでしたら・・・いくらでも叶えて差し上げますよ?」





ニヤリと口角を上げるセバスチャン。





「っ・・・!」





恵梨華はビクリと肩を震わせた。





頬が桃色に染まっていく。





「ふふ・・・冗談ですよ。お嬢様の為なら何でも致しますよ?」





「ほ、ほんと・・・!?」





「えぇ。ここではアレですので、中の方へどうぞ。丁度、葬儀屋さんもいらしてますよ」





恵梨華はその言葉に耳を疑った。





「い、今なんて・・・?」





「・・・?葬儀屋さんが何か・・・?」





「な、なんでアンダーテイカーがいるの!?」





恵梨華は思わず声が大きくなった。





「先程電話がありまして・・・なんでも坊ちゃんに用事があるとかで」





「そ、そうなんだ・・・」





「あの方がいらしていては都合が悪いお願いでしたか?・・・やはり私と逢引しに?クスッ」





「ちっ、違うよ!!」





恵梨華は顔を真っ赤にして否定した。





「おやおや・・・そこまで否定しなくても・・・私だって傷つきますよ?」





「セバスチャンってば、からかい過ぎだよぉ・・!」





「・・・ですが私がお嬢様を想う気持ちに嘘偽りはありませんよ?」





「セバスチャンにとっては餌としてー、でしょ?」





恵梨華はまるで小悪魔のような悪戯な笑顔を浮かべた。
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