短編夢小説T
□感情移入
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「今日もイベント楽しみだね!」
「うん♪恵梨華は今日何のコスやるのー?」
「ヒッヒッ、恵梨華はアンダーテイカー専門だよ」
「ぷっ!またアンダーテイカー?恵梨華変わってるよねー」
楽しい雑談をしながらイベント会場に向かう二人。
普通の子は色んなキャラのコスプレを楽しむものである。
しかし恵梨華はアンダーテイカー以外やった事がなかった。
「えー?そうかなぁ、皆が浮気しすぎなんだってー」
「色々やった方が面白いじゃん!・・・わっ、今日も凄い人だねー」
会場に着いた二人。
溢れ出る熱気に圧倒されていた。
早速、更衣室に向かった。
「でも恵梨華は地毛でやってるからいいよね〜」
「この長さにするの苦労したけどねぇ・・・」
「でもちょっとメイクして着替えるだけで完成じゃん!」
「傷つけてカラコン入れるだけだからね!その点は楽かも?」
会話をしながら準備する二人。
徐々に完成していく二人。
恵梨華の黒い瞳はカラコンにより黄緑色。
長い髪の毛は銀色に染められていた。
顔に縫い目の傷を作り、みつあみを結んだ。
そして神父服の上にコートを羽織り、首にネックレス。
斜めに布を縛り、高いヒールのブーツを履いた。
そして最後にぽすっと無造作に帽子を被った。
「うん、完璧!」
鏡を見ながらニヤニヤとしている恵梨華。
「恵梨華早いってばー、もうちょっと待ってー」
友達はまだ準備が終わっていないようだった。
「お?今日はシエルなんだー?」
友達の姿を見ながら問いかける恵梨華。
「そうなんだよね〜、恵梨華のがちっちゃいから並んだらまずいよね」
「た、確かにアンダーテイカーよりおっきいシエルになっちゃうね・・・」
元々小柄な恵梨華。
恵梨華はアンダーテイカーをやるよりシエルをやった方が似合うのかもしれない。
しかしそういう問題ではないのだ。
アンダーテイカーへの愛は誰にも負けない恵梨華。
それだけは周りも認めてくれている。
「よし、完成♪恵梨華ー、いこっか!」
「うん!」
楽しそうに手を繋ぎ会場に向かう二人。
「あ!恵梨華さんだ!」
”ちっちゃいアンダーテイカー”で有名な恵梨華。
今日も初めて見る女の子から声をかけられていた。
「写真、いいですか!?」
「もしあれだったらおっきいシエルとのツーショットでもいいですよ(笑)」
「ちょっと恵梨華ってば〜、それ爆笑なんだけど!」
隣に居た友達が言った。
そしてポーズを決める二人。
カシャッ―
「ありがとうございます!」
女の子は何枚か写真を撮って満足そうに帰っていった。
「でも相変わらず恵梨華は有名だよね〜」
「えー、そうかなぁ?」
「こんなちっちゃい葬儀屋さんなんて印象強すぎだよ!」
友達はニヤニヤ笑いながら恵梨華の頭をポンポンとした。
「むぅー、これでも超ヒール高くして頑張ってるのにー」
ぷぅっと膨れて不貞腐れる恵梨華。
友達はそんな恵梨華を温かい目で見ながら笑っていた。
それから写真を撮り合ったり撮られたり、楽しい時間が流れた。
「あーん、もうこんな時間かー」
「そろそろ着替えて帰らないとやばいねー」
二人は少し残念そうな顔をしながら、更衣室で帰る準備をした。
「それじゃぁまた来週のイベントで!」
「うん!またねー!」
駅の前で友達と別れた恵梨華。
そのまま家に帰る為にてくてくと歩いていた。
信号が青になり、横断歩道を渡っている途中だった。
突然、軽トラックが恵梨華目掛けて突っ込んできたのだ。
「っ・・・!」
恵梨華は突然の出来事に動く事が出来ず、思わず目を瞑った。