短編夢小説T

□せっかちな愛娘
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「はぁ・・・」





先程から深いため息をつく恵梨華。





ここは死神派遣協会の会長室。





ソファーに寄り掛かりながら恵梨華はぐったりとしていた。





「一体どうしたんだい?」





「あ・・・パパ・・・」





協会長は恵梨華の隣に腰掛けた。





「浮かない顔をして・・・一体何があったんだい?」





恵梨華を心配そうに見つめる協会長。





「私ね・・・この前魂回収に行った時に・・・ある人に恋をしてしまったの・・・」





「ほう・・・つまりその相手は人間と言うわけか・・・」





「多分・・・」





恵梨華は寂しそうに遠くを見つめた。





「パパがもう何人もいい死神を紹介してあげてるだろう?」





「えー・・・パパってば趣味が悪いんだもん・・・」





恵梨華は呆れたように協会長を見た。





「まだグレルやウィルのがましよ」





「ウィリアム君はともかく、問題児のグレル君はどうかと思うぞ・・?」





「だからパパは趣味が悪いのよ・・・」





恵梨華は頬杖をついた。





「・・・それで、その人間界の男と言うのはどんな奴なんだ?」





「あぁっ・・・思い出すだけで胸がときめいてしまうわ・・・!」





恵梨華は急に楽しそうに話し出した。





「流れるように美しい銀色の髪・・・すらっとしたライン・・・そして前髪に隠された謎の素顔・・・!」





まるでドルイット子爵のように恵梨華の後ろには薔薇の花が咲いていた。





そして自分自身を抱きしめるように服を握った。





「漆黒の服に身を包み、その美しい白い肌は謎のベールに包まれていて・・・」





「・・・つ、つまり恵梨華、顔も分からぬ男に惚れたのか?」





「え・・・ま、まぁそうなるけど・・・」





協会長は頭をぽりぽり掻きながら困ったような表情を浮かべた。





「あの広い人間界からそれだけの特徴でその男を捜すのは骨が折れそうだ・・・」





「っ・・・!探してくれるの!?」





「愛しい娘の頼みを聞かない訳にはいかないだろう?」





協会長はニッと口角を上げた。





「パパありがとう!」





恵梨華は思わず協会長に飛びついていた。





「おっと・・・」





協会長はバランスを崩しながらも、愛しい娘を抱きしめた。





「さて・・・誰に頼もうかね」





コンコン・・・





協会長が悩んでいると、扉をノックする音が聞こえてきた。





「おや・・・?誰だい?」





「ウィリアム・T・スピアーズです。協会長様に判を押して頂きたく、参りました」





「おぉ、丁度良い所に来たね。さ、中に入っておいで」





「失礼します。っ・・・!恵梨華さんも一緒でしたか」





ウィリアムは恵梨華の顔を見た途端、動揺したように驚いていた。





その頬が少し桃色に染まっている。





「ウィル!」





恵梨華はウィリアムを見ると、真っ先に近くまで走っていった。





「これこれ恵梨華、ウィリアム君が困っているだろう?」





「あ・・・いえ、私は大丈夫ですよ」





「とりあえずそこに座ってくれないか?ウィリアム君」





「では、失礼致します」





ウィリアムは協会長の反対側のソファーに座った。





恵梨華はウィリアムのすぐ隣に腰掛けた。





「ウィリアム君、君に頼みたい事があるんだ」





「・・・?なんでしょうか?」





「えーっと・・・恵梨華、特徴を教えてやってくれ」





「さらさらと流れるように美しくキラキラと輝く銀色の髪・・・」





恵梨華は先程よりも詳しく熱く語っていた。





あまりの熱弁に、協会長ですら少し引き気味の様子だった。





ウィリアムは恵梨華の話を熱心に聞いていた。





そして黙って聞いていたウィリアムが恵梨華の話を聞き終わると、その口を開いた。





「それはきっと・・・ロンドンでUndertakerという葬儀屋を営んでいらっしゃるあのお方かと・・・」





「ロンドンね!ウィル!ありがとー!」





恵梨華は物凄いスピードで会長室を後にした。
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