短編夢小説T
□突然の来客
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「コメント・・・送信っと♪」
恵梨華はパソコンの前に座りながら、とあるサイトに拍手コメントを送っていた。
「(しかしこのサイト・・・何この異常な更新率・・・暇なのか・・・?)」
その異常な更新率に若干引き気味の恵梨華。
「まぁいいや。さて、新しくうpされた小説でも読もうかなぁ♪」
恵梨華は新作の夢小説を読もうとしていた。
その時だった。
”ピンポーン”
チャイムの音が鳴る。
「(あぁ・・!今いそがしーの!)」
とりあえず無視する方向の恵梨華。
しかし暫くするとまたチャイムの音が鳴る。
「(しつこいなぁ・・・いませんよーだ!)」
意地になった恵梨華は、パソコンの前から動こうとしなかった。
”ピンポッピンポッピンポッピンポッピンポーン♪”
相手も意地になってるのであろう。
物凄い速度で鳴り続けるチャイムの音。
あまりの煩さに恵梨華は観念したのか、玄関へと向かった。
「(全く・・・誰だよ!)はいはーい。今出ますよっと」
鍵を開け、玄関の扉を開いた。
「ヒッヒッヒ・・・随分待たせるんだねェ〜?」
玄関に立つ男を見て恵梨華は驚いた。
銀色の長い髪。
見覚えのある声。
見覚えのある姿。
それはまさしくアンダーテイカーだった。
バタンッ・・・
恵梨華は何事もなかったかのように扉を閉めた。
”ピンポンピンポンピンポーン♪”
外からチャイムの攻撃が降り注ぐ。
恵梨華は胸に手を当て大きく深呼吸した。
そしてゆっくりと扉を開けた。
「どうして閉めてしまうんだ〜い?」
目をごしごしと擦る恵梨華。
何度擦っても、アンダーテイカーはそこにいる。
おそるおそる、恵梨華は問いかけた。
「ア、アンダーテイカー・・・?」
「ん〜?どうしたんだい?」
「(や、やっぱり本物・・・!?え!?私、頭おかしくなっちゃったの!?)」
恵梨華は思わず自分の頬っぺたをつねった。
「いたっ・・・!・・・や、やっぱり夢じゃない・・・!」
「夢・・・?君はおかしな事を言う子だねェ〜?ヒッヒッ」
「(あのサイトの管理人に洗脳されてしまったのか・・・!?)」
恵梨華は未だに現実が信じられないでいた。
「それより恵梨華・・・ここは寒いねェ・・?」
アンダーテイカーは大袈裟に寒そうに震えた。
「あ・・・じゃ、じゃあ中にどうぞ・・・」
「ヒッヒッヒッ、いいのかい?じゃあ、遠慮なく入らせてもらうよ」
「あ!靴脱いでね!?」
「・・・当たり前だろう?」
アンダーテイカーはニヤニヤと笑いながら、丁寧にブーツの紐を解いた。
「散らかっててごめんね・・・!今紅茶を淹れるからね」
恵梨華はバタバタと台所へと走っていった。
「(ど、どうしよう・・・本物?アレ本物のアンダーテイカー?)」
お湯を沸かしながら未だに動揺している恵梨華。
震える手で紅茶を注ぎ終えると、アンダーテイカーの待つ部屋へと向かった。
「お待たせー・・・・って、わあああーーー!な、何してんの!」
戻ってきた恵梨華は驚きのあまり、持っていた紅茶を落としそうになった。
アンダーテイカーがパソコンの前に体育座りで座っているのだ。
そしてマウスをかたかたと動かしている。
アンダーテイカーが見ているページ、それは先程恵梨華が開きっぱなしにしてしまっていたページ。
そう、アンダーテイカーの夢小説だった。
黙ってパソコンの画面を見ていたアンダーテイカーが口を開いた。
「これって・・・小生だよねェ・・?」
不思議そうに首を傾げるアンダーテイカー。
「小生はこんなにも有名人なのかい?」
「ゆ、有名人と言うか何と言うか・・・」
恵梨華は何て答えていいのか分からず、言葉を濁した。