短編夢小説T
□二人の葬儀屋
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「お〜?いい感じに惨殺死体だねェ〜」
アンダーテイカーは運ばれてきた柩を開けながら言った。
「アンダーテイカーは趣味が悪いねぇ。私はもう少し綺麗に殺して欲しいと思うけど?」
アンダーテイカーの隣で死体を見下ろしながら恵梨華は言った。
「そうかい?・・・ん〜、この傷は隠すより桃色に染め上げて花びらのように際立たせようか」
「え〜?目立たないように綺麗にした方がよくない?」
恵梨華はアンダーテイカーの意見に少し眉を寄せた。
「この真っ白な肌に一輪の薔薇を・・・恵梨華はこの美しさが分からないのか〜い?」
「こんなに白い肌なんだから、お人形さんのように美しく綺麗にした方が・・・」
葬儀屋を営む死神二人。
二人の意見はいつも割れていた。
「しょうがないねェ・・・じゃあ、いつものアレで決めるかい?ヒッヒッ」
「ふふふ・・・望むところだよ!今日こそは負けないんだから!」
恵梨華とアンダーテイカーは、火花をバチバチ散らしながら、見つめ合っていた。
そして店の端に位牌を10個立てると、アンダーテイカーは口角を上げて笑った。
「それじゃあ・・・小生から行くよォ〜?」
持っていた頭蓋骨を位牌目掛けて投げつける。
ゴロゴロゴロ・・・
頭蓋骨が勢いよく転がっていく。
パカーン!
「ヒッヒッ・・・ストラーイク♪」
「む・・・それじゃあ私の番だね・・・!」
恵梨華は倒れた位牌を直すと、所定の位置に立った。
「それじゃあ行くよ・・・!えいっ!」
恵梨華が投げようとした瞬間、店の扉が開かれた。
「いるか?アンダーテイカー」
恵梨華は驚いてシエルの方を見た。
そのせいでコントロールがずれたのか、位牌がひとつ残ってしまった。
「ああああああ!!!!」
恵梨華は思わず叫び声をあげた。
「ヒッヒッヒッ・・・この勝負は小生の勝ちだねェ〜?」
アンダーテイカーは満足そうに笑みを零した。
「むぅ・・・シエルのせいなんだからね!」
「ぼ、僕はただ店に来ただけだ・・・!」
「・・・相変わらず危ない遊びをされてますね、お二人は」
シエルの後ろにいたセバスチャンがひょいっと顔を覗かせた。
「遊びじゃないよ!お客さんをどうやって仕上げるか勝負してたの!」
「左様でございますか」
「ヒッヒッ・・・勝負は小生の勝ちだったけどねェ〜?」
「それよりアンダーテイカー、この男に見覚えはないか?」
シエルが顎でくいっとセバスチャンに指示した。
セバスチャンは持ってきた資料をアンダーテイカーに手渡した。
「どうだったかな〜?」
アンダーテイカーは資料を見ながらニヤニヤしていた。
「なんだか面白いモノを見れば思い出せそうな気がするなァ〜」
「はぁ・・・セバスチャン、お前に任せた」
それを聞くとセバスチャンは小さくため息をついた。
「かしこまりました。では、坊ちゃんと恵梨華さんは外へ・・・」
恵梨華とシエルは言われるがまま、外へ出た。
やけにニヤニヤしている恵梨華。
シエルはそんな恵梨華を不思議そうな目で見ていた。
「恵梨華・・?どうかしたのか?」
「にひひ♪何でもないよ」
恵梨華はニコリと微笑んだ。
シエルは恵梨華のその笑顔を見ると、頬を赤く染めた。
照れ隠しの為に恵梨華に背を向けるシエル。
その時だった。
”ギャハハハ!ブフォー!ぶひゃっはっははは!ヒッヒッ・・!”
店内からアンダーテイカーの物凄い笑い声が聞こえてきた。
そしてセバスチャンが中から出てきた。
「・・・終わったようだな」
「えぇ、お話頂けるそうですよ」
恵梨華とシエルが中に入ると、アンダーテイカーはぐったりとカウンターにもたれかかっていた。