短編夢小説T
□生アンダーテイカー
1ページ/2ページ
今日は待ちに待った恵梨華の誕生日。
恵梨華は期待を胸に、急いで自宅へと向かっていた。
「るんるん♪アンダーテイカーの出番どれくらいあるかなぁ?」
誕生日プレゼントに黒執事のOVAを買って貰う約束をしていた。
ニヤニヤしながら走る恵梨華。
これではただの変人である。
あと少しで家に着く、そんな時だった。
キキーッ!
静かな街に鳴り響く車のブレーキ音。
「え・・・?」
トラックが勢いよく恵梨華の方へと向かってきていた。
「きゃああああっ!!」
ガシャーーン!
恵梨華はそのまま意識を失った。
目が覚めると体が浮いている事に気づく。
「え・・・?ここは・・・?」
”ヒ〜ッヒッヒッヒッ”
どこから共なく聞こえてくる聞き覚えのある笑い声。
恵梨華は辺りをキョロキョロと見回して声の主を探した。
しかしどこにも見当たらない。
”上だよ、上”
恵梨華は言われるがまま、上を向いた。
すると信じられない事に、そこにはアンダーテイカーの姿があった。
「え・・・?アンダーテイカー・・・?」
「ヒッヒッヒッ・・・な〜にをそんなに驚いているんだ〜い?」
目の前の人物が信じられないのか、恵梨華はごしごしと目を擦った。
しかしそのアンダーテイカーが消える事はなかった。
「ここは生と死の狭間、君は今、病院のベットで生死を彷徨っているんだよォ〜?」
「そ、そうなんだ・・・で、でも何でアンダーテイカーが?」
「小生は死神だよぉ?」
アンダーテイカーは不思議そうに人差し指を唇に当てながら首を傾げた。
「そ、葬儀屋をしてるんじゃ・・・?」
「ヒッヒッ・・・あれは漫画の話だろう?」
ますます頭が混乱してくる恵梨華。
「黒執事の原作者はねェ・・・一度死にかけているのさ」
アンダーテイカーは混乱している恵梨華に説明をしだした。
「でも彼女には素晴らしい才能があった・・・だからリストから外れたのさ」
「じゃ、じゃあ、その時の体験を漫画にしたって事・・・?」
「そういう事さ」
恵梨華は理解したのか、突然ニヤニヤとニヤつき始めた。
「という事は・・・!生アンダーテイカーじゃん!」
急にテンションが上がる恵梨華。
おもむろにアンダーテイカーに抱きついていた。
「と、突然どうしたんだい!?」
慌てるアンダーテイカーを尻目に、恵梨華はアンダーテイカーの前髪を持ち上げた。
「キャー!やばい!やばいよアンダーテイカー!」
アンダーテイカーの素顔を見て歓喜の声を上げる恵梨華。
そんな恵梨華にアンダーテイカーは困惑した表情を浮かべていた。
「あっ・・・ご、ごめん・・・つい舞い上がっちゃって・・・」
困った表情に気づき、恵梨華は慌ててアンダーテイカーを離した。
「いや・・・別に構わないけどねェ〜?・・・ところで」
アンダーテイカーは急に真剣な表情をした。
「最初に言った通り、ここは生と死の狭間。君は死にかけているんだ」
「あ・・・そ、そうだったね」
「恵梨華・・・君はとても綺麗な魂をしているねェ〜?」
「え・・・?そうなの?」
アンダーテイカーは恵梨華の頬にそっと手を添えた。
「ああ、そうさァ・・・だから選ばせてあげるよ」
「ん?何を?」
「生きるか、死ぬか・・・をね」
恵梨華はその言葉を聞くと、頭を抱えて考え込んでしまった。
そして暫く考えると、静かに言った。
「どっちも選ばない・・・って言うのはアリ?」
「へ?」
アンダーテイカーは恵梨華の意外な答えに、思わず変な声を出した。
「だって・・・目の前に大好きなアンダーテイカーがいるんだよ?」
恵梨華はそっとアンダーテイカーの髪に指を絡ませた。