短編夢小説T

□宅配便、始めました。
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カタカタカタ・・・





部屋に響く無機質な音。





「よし・・・コメント送信っと」





恵梨華はお気に入りのサイトの管理人にコメントを送っていた。





「しかしここの管理人・・・体弱すぎでしょ・・・」





よく体調を崩す管理人に呆れる恵梨華。





そしてビーカーに入った紅茶を一口飲んだ。





「あぁっ・・・!やっぱり紅茶はビーカーだよねぇ!」





ガラス越しに輝く鮮やかに色付いた紅茶。





恵梨華はそれを見つめながらうっとりとしていた。





優雅なティータイムを終え、ふと先程のサイトを確認した。





「・・・え、早!もうコメント返信の日記書いてあるし!」





送信してから数分しか経っていない。





しかし確かにそのサイトには返信の日記が書いてあった。





あまりの早さにマウスを握る手に力が入る。





そして恐る恐るそのページを開いた。





”コメントありがとうございます!お礼にうちのアンダーテイカーを送りますね”





謎の文章に呆然とする恵梨華。





「・・・うちのアンダーテイカーを送る・・・?どういう意味だろう・・・」





指で唇を触りながら、必死にその意味を考える恵梨華。





そんな時、突然インターホンが鳴った。





”ピンポーン”





「はいはーい」





恵梨華はモニターが設置してあるキッチンへと向かった。





そして応対ボタンを押す。





「宅配便でーす。ヒッヒッ」





モニターに映し出された人物、それはアンダーテイカーだった。





怪しく袖で口元を隠している。





「え・・・?!あ、い、今行きます!」





恵梨華は混乱しながらも、急いでドアへと向かった。





ガチャリ―





ドアを開けると、真っ黒な服に身を包んだアンダーテイカーが立っていた。





美しい銀色の髪が一層栄える。





「え、えっと・・・アンダーテイカーさん・・・ですか・・・?」





「そうだよぉ〜」





恵梨華は信じられない様子でポカーンと口をあけていた。





しかし、暫く考えると、ある結論に達した。





「あ、コスプレですね、管理人さん」





ポンッと手のひらを叩く恵梨華。





「コスプレ〜・・?」





アンダーテイカーはその言葉を理解できない様子だった。





「や、やだなぁ管理人さん。・・・それにしても声まで似てるなんて凄いですね!」





「小生は管理人じゃないよォ〜?」





「またまたぁ〜!でも、本物のアンダーテイカーに会えたみたいで幸せです!」





恵梨華はニコリと微笑んだ。





アンダーテイカーはそんな恵梨華をチョイチョイッと手招いた。





恵梨華は不思議に思い、首を傾げながらもアンダーテイカーに近づいた。





するとアンダーテイカーは、おもむろに自分の前髪をかき上げた。





美しい死神の瞳。





人間では表現する事が出来ない黄緑色の燐光を放っていた。





「っ・・・!」





間近で見る本物のアンダーテイカーの瞳に恵梨華は固まってしまった。





カァッと頬が赤くなる。





「ヒッヒッヒ・・・これで分かっただろう?」





ニヤニヤと勝ち誇ったような笑みを浮かべるアンダーテイカー。





「た・・・確かにその黄緑色の燐光は間違いなく・・・本物・・・だよね・・・」





「ぐふふ・・・やっと信じてくれたね」





「で、でも本物のアンダーテイカーが私に何の用で・・・?」





「おやぁ〜?管理人から聞いていなかったのか〜い?」





恵梨華はその言葉にあの文章を思い出していた。





”うちのアンダーテイカー送りますね”





「(あ、あれはこういう意味だったの!?ってかアンダーテイカーって実在したの!?)」





ますます頭が混乱してくる恵梨華。





アンダーテイカーはそんな恵梨華をギュッと抱きしめた。





「しかし・・・恵梨華がこんなに可愛い子だなんて思わなかったよ」





愛おしそうに恵梨華の髪の毛を触るアンダーテイカー。





艶やかな黒髪が、アンダーテイカーの長い指によって弄ばれる。





「小生が管理人から聞いていたのは名前だけだったからねぇ・・・」
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