短編夢小説T

□バレンタイン戦争
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「アンダーテイカー?・・・・・アンダーテイカー?」





朝からアンダーテイカーの姿が見えない。





恵梨華はアンダーテイカーの名前を呼びながら家中探していた。





台所、寝室、書斎、店内・・・。





どこを探してもアンダーテイカーの姿はなかった。





「・・・・うーん」





困り果てた恵梨華は静かに目を閉じ、精神を集中させた。





そして勢いよく目を見開く。





その瞳が強い黄緑の燐光を放った。





「・・・・だめかぁー・・アンダーテイカーってばまた気配消してるのね」





恵梨華は小さくため息をつきながら地道に探す作業に戻った。





店の柩を一つ一つ開ける。





「ここにもいない・・・・」





恵梨華はカウンターの横にある植木鉢の下を覗いた。





「アンダーテイカー・・・?」





その時、店の扉が開いた。





「恵梨華・・・一体何をやってるんだ?」





シエルは不思議そうな表情を浮かべながら恵梨華を見ていた。





「アンダーテイカー探してるの・・・シエル、知らない?」





「葬儀屋さんはそんな所にはいらっしゃらないかと・・・」





シエルの後ろにいたセバスチャンが困ったような顔で言った。





「・・・恵梨華にとってアンダーテイカーはダンゴムシか何かか?」





「だって気配も消してるみたいだし、朝から見つからないの・・・」





それを聞くと、シエルとセバスチャンはニヤリと笑った。





「おや、これは好都合ですね、坊ちゃん」





「あぁ、アイツがいては邪魔されかねないからな」





恵梨華はそんな二人を不思議そうな顔で見た。





「二人で何の話してるのー?」





「恵梨華、今日が何の日か知ってるか?」





「今日・・・?うーん・・・・・・あ、ウァレンティヌスちゃんの命日?」





「ウァレンティヌスちゃんって・・・まさか恵梨華、知り合いなのか?」





シエルは驚いたような表情で恵梨華を見た。





セバスチャンも知り合いのようで、クスクスと後ろで笑っている。





「恵梨華さん、本日は聖バレンタインの日。愛する方にチョコレートを贈る日ですよ」





「あ・・・そうなんだ?」





恵梨華はそれを聞いた途端、一瞬残念そうな顔をした。





それを見たセバスチャンは悪魔の瞳を輝かせた。





赤く冷たい光。





シエルはそんなセバスチャンを睨みつけた。





「おい、セバスチャン。いい加減にしろ。恵梨華が怯えるだろ」





恵梨華を気遣うシエル。





しかし恵梨華は全く気にしていない様子だった。





「私とした事が・・・申し訳ございません」





丁寧にお辞儀するセバスチャン。





するとシエルはポケットから綺麗に包装された小さな箱を取り出した。





そして少し頬を赤らめながら照れくさそうに恵梨華に差し出した。





「お、お祝い事だからな・・・よかったら受け取ってくれないか?」





「えっ・・・い、いいの?」





動揺しているのか、恵梨華の瞳の燐光が揺れている。





そんな恵梨華を見て、シエルは不敵に微笑んだ。





「あぁ、勿論だ」





「あ、ありがとう」





恵梨華がその箱を受け取ろうとした時、後ろにいたセバスチャンがシエルの隣に来た。





そしてどこからともなく可愛くラッピングされた箱を取り出した。





「恵梨華さん、よろしければ私からのチョコも受け取って頂けないでしょうか?」





そんなセバスチャンを、シエルは冷めた目で見ていた。





「お前・・・いつのまに・・」





「ふふ・・・何か問題でも?」





「セ、セバスチャンまで・・!?」





恵梨華は驚いた顔でシエルとセバスチャンを交互に見た。





するとシエルはニッと口角を上げた。





「なら恵梨華、どちらを受け取るかお前が決めてくれ」





「えっ・・?」





「おやおや・・・坊ちゃん、恵梨華さんがお困りですよ?」





セバスチャンも自信があるようで、ニヤリと笑っている。





その時突然、天井からデスサイズが突き抜けて床に突き刺さった。
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