短編夢小説T
□悪魔のような死神
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これはアンダーテイカーがまだ現役の時のお話。
アンダーテイカーはその美貌と強さから、女死神達の憧れの的だった。
勿論男死神達からは尊敬の眼差しが向けられていた。
「はぁ・・・窮屈だねぇ・・・」
キラキラした目で皆から注目を集める的である彼はため息をついていた。
まるでそんな死神達を鬱陶しがるように今日も仕事が終わるとそそくさと家に帰るのであった。
家に着くと郵便箱には溢れんばかりのラブレター。
「はぁ・・・」
それを見るとまた深い深いため息をついた。
「昨日全部捨てたばかりだと言うのにねぇ・・・」
毎日のように大量に送られてくる手紙にうんざりしていた。
そんな生活を送っていたある日、アンダーテイカーは一人の新人死神に出会った。
彼女の名前は恵梨華。
実技だけはAAAだが、その他がボロボロの彼女はギリギリBランクで試験に合格していた。
勿論、恵梨華が希望するのはアンダーテイカーと同じ回収課。
アンダーテイカーが担当する新人達の一人であった。
(あの有名なアンダーテイカー大先輩に教えていただけるなんて僕たちは何て運がいいんだ!)
(アンダーテイカー様ぁ!キャッ、今こっちをお向きになられたわぁ)
(こんなに素敵なアンダーテイカー様を間近で見れるなんて・・私幸せ〜♪)
(オレもアンダーテイカー大先輩みたいになれたらいいなぁ)
(あぁ〜ん、かっこいい・・・私、もうこれでいつ死んでもいいわぁ♪)
いつも通り、そんな黄色い声が飛び交う中、恵梨華だけはそっぽを向いていた。
皆と違う恵梨華に、アンダーテイカーは少し興味を持っていた。
「君は・・・恵梨華と言うんだねぇ〜」
アンダーテイカーは持っているリストを見ながら恵梨華に話しかけた。
皆の痛いぐらいの嫉妬の視線が恵梨華に集中した。
そして恵梨華はちらりとアンダーテイカーを見ると、素っ気無く言った。
「どうも」
一言だけ言うと、まるでアンダーテイカーを無視するように視線をそらした。
性格に難あり、と言ったところだろうか。
(なぁに?アレ。アンダーテイカー様に失礼よね)
(うわっ、この女やばくね?)
(アンダーテイカー様に話しかけてもらえるだけでも幸せな事なのに・・・)
ぼそぼそと恵梨華に対する誹謗中傷が飛び交った。
恵梨華はそんな事を気にする様子もなく、悪びれる様子もなかった。
「ヒッヒッヒ・・・面白い子だねぇ?」
ニヤリと怪しい笑みを浮かべながら、アンダーテイカーは新人研修を始めた。
その間もアンダーテイカーは恵梨華が気になって仕方がなかった。
その瞳はまるで黒猫のように気まぐれで冷たい輝きを放っていた。
髪はアンダーテイカーと同じ銀色。
実践の研修中、風になびく恵梨華のさらさらとした髪。
そしてどこまでも残酷で冷たい瞳。
人を殺すという事に何も感じないのだろうか?
普通の新人なら皆、少しの躊躇いと恐怖を感じるものだ。
しかし恵梨華はまるで魂を回収するのを楽しむかのように華麗に舞っていた。
先程まで恵梨華の事を罵っていた死神達も息を飲んでその姿を見ていた。
こうして今日の仕事が無事に終わった。
いつもなら真っ先に家に帰るアンダーテイカー。
しかし今日は違っていた。
「ヒッヒッヒ・・・恵梨華?このあと暇か〜い?」
周りの皆が驚いた顔をしていた。
あのアンダーテイカーが女の子を誘っていたからだ。
先程の新人研修の時は少人数だったが、今度は先輩死神達からも嫉妬の眼差しが送られた。
しーん、と辺り一帯が静まり返った。
そして重々しい空気の中、恵梨華が口を開いた。
「フフッ・・・別に付き合ってあげてもいいけど?」
ニヤリと妖艶に微笑む恵梨華。
それはまるで悪魔の微笑みのようだった。
アンダーテイカーはその冷たく怪しい笑顔に心奪われていた。
今にも殺されそうな冷酷な瞳に吸い込まれ、そのまま二人はその場をあとにした。