長編夢小説

□死神を愛した天使
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「っ・・・!?」



周りをキョロキョロ見渡しながら困り果てる一人の女の子がいた。



彼女は自分が誰であるかすら覚えていなかった。



天使の象徴である銀色の髪は漆黒の黒に変わり、美しい白い翼も消えていた。



ただ一つ、大天使の証である金色の瞳だけは今もなおキラキラと輝いていた。



暫くそこに立ち尽くしていると、目の前の店の扉がキィィという音と共に開かれた。



「おやぁ・・・?こんな所で何をし・・・!?」



男は彼女を見るなり、そのあまりの美しさに言葉を失っていた。



「・・・?」



記憶を失っている彼女は、目の前の怪しい男を見てビクリと肩を震わせた。



「あ、あぁ・・・こんな所で何をしているんだ〜い?」



「私・・・気がついたらここにいたの。自分が誰なのか、どこから来たのかわかんなくて・・・」



彼女はそう言うと悲しそうに俯いた。



「ヒッヒッヒ・・・とりあえず中へお入り?」



彼女は案内されるがままにその怪しいお店へと入った。



そこには沢山の柩が並べられていた。



「今・・・紅茶を入れてあげるからねぇ〜?ヒッヒッヒ」



「あ・・・ありがとう」



「そこに座っていい子に待ってるんだよぉ?」



ヒッヒッヒと怪しい笑い声を出しながら男は奥へと消えていった。



「私・・・一体誰なんだろう・・・」



一通り店内を見渡した彼女はふと自分の胸のペンダントに気がついた。



銀色のペンダントには”恵梨華”と書かれていた。



「(私の名前は恵梨華って言うのかなぁ・・・?)」



そんな事を思っていると、先ほどの男が帰ってきた。



「ヒッヒッヒ・・・さぁどうぞ?」



記憶の無い彼女はビーカーの中に入れられている事に何の違和感も感じなかった。



「ところで・・・君はどの程度記憶を無くしているんだい?名前は分かるかい?」



「あ・・・私、恵梨華って言うみたい・・・ほらここに・・・」



恵梨華は自分の身に着けているペンダントを男に見せた。



「本当に何も覚えていないんだねぇ〜」



「うん・・・ごめんなさい・・・」



「君が謝る事じゃないさ〜」
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