長編夢小説

□大罪
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アンダーテイカーは恵梨華の瞳に魅入られていた。





静かにゴクリと息を飲むアンダーテイカー。





「だけどねェ・・・?恵梨華、君は自殺したんだろう?」





「世界から不要な人間を排除しただけだよ?」





「・・・」





「さっきの話だと、死神は魂の審査をするんでしょ?」





「世界に有益になりうる人間をリストから除外するために・・・ねェ」





「私が生きていたとしても、世界に何の影響も与えない」





「・・・恵梨華、よくお聞き」





「・・・?」





「いいかい?自殺は大罪なんだ。とても罪深い事なんだよ?」





「ならこの魂で償えばいいよ。だから早くこの・・・っ・・・!?」





恵梨華が門を開こう扉に手をかけた。





その瞬間、アンダーテイカーに後ろから抱きしめられていた。





「え・・・?」





何が起こったのか分からない様子の恵梨華。





まるで時が止まってしまったかのような時間が流れる。





アンダーテイカーは何も言わずに恵梨華を抱きしめたままだった。





「ア、アンダーテイカー・・?」





突然抱きしめられて戸惑う恵梨華。





しばらく黙っていたアンダーテイカーが重い口を開いた。





「その大罪は・・・そんな事では償いきれないねェ・・・」





先程までの声色とは違い、低い低い声で言う。





アンダーテイカーの鋭い瞳が黄緑色の光を放つ。





ゾクリ・・・と恵梨華の背筋を嫌な寒気が走った。





「・・・じゃ、じゃあ・・・どうすればいいのよ・・・」





冷や汗をかきながら、必死に冷静さを保とうとする恵梨華。





アンダーテイカーはニタリと不気味な笑みを浮かべた。





「君にはこれから死神として働いてもらう事にしたよ・・・永遠に・・ねェ」





「え・・?」





「恵梨華は命の大切さが分からないみたいだからねェ・・?」





「・・・分かってる・・つもりだけど・・・」





「分かってないさ、分かっているなら自殺なんてバカな真似はしないよ」





「・・・・・」





そう言われると何も言い返せない恵梨華。





「さあ・・・小生と契約しようか・・・」





アンダーテイカーが自分の親指を噛んだ。





ポタッ・・・





アンダーテイカーの真っ赤な血が床に一滴落ちる。





するとその血が紋章みたいな形に広がっていった。





「汝・・・契約を欲するかい?」





まるで獲物を狙う獣のような目。





怪しく光る黄緑色のその瞳から目が離せない。





「・・・」





恐怖で体が震えだす。





自ら命を絶った恵梨華に、”永遠の命”というのはあまりにも辛い。





「嫌・・・嫌だ・・・永遠に生きろだなんて・・・そんなの・・・」





綺麗な黒色の瞳から大粒の涙が零れ落ちる。





しかしアンダーテイカーはその様子を冷たい視線で見ていた。





「大罪を犯した恵梨華。その罪、永遠を持って償ってもらおうか」





「(あぁ神様・・・貴方はどこまで私を追い詰めれば気が済むんですか・・・)」





「さあ・・・手を・・・」





覚悟を決めた恵梨華は言われるがままに血の魔方陣の上に手を置いた。





アンダーテイカーはニヤリと笑うと、大鎌のデスサイズを振り上げた。





「今一度問う、汝、契約を欲するかい?」





「それが・・・それが大罪を犯した私への試練なら・・・私は受け入れる・・!」





次の瞬間、アンダーテイカーはデスサイズを恵梨華の手の甲に突き刺した。





「いっ・・・ぐっ・・・」





あまりの痛みに顔を歪める恵梨華。





差し出した左手の手首を右手でギュッと掴んだ。





手の震えが止まらない。





ボタボタと恵梨華の血が床に滴り落ちる。





その血が魔方陣を完全なモノへと書き換えていく。





そしてその魔方陣が完成した時、恵梨華は光に包まれた。
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