長編夢小説

□小さなお客さん
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あと少しで外に出れる、という所で社員に見つかってしまった。





「これはこれは葬儀屋さん、ご苦労様です」





「ヒッヒ・・いつでもご相談あれ」





アンダーテイカーは軽く会釈した。





そのまま通り過ぎようとするアンダーテイカーと恵梨華。





しかし、社員は恵梨華の姿を見つけてしまった。





「あの・・・そちらのお嬢さんは・・?」





後ろから声をかけられ、思わず固まってしまった。





「こ、この子かい・・?」





アンダーテイカーは冷や汗をかいていた。





すると恵梨華が無邪気な笑顔で社員に答えた。





「あたし、まいごになっちゃったの。このひと、おそとへつれてってくれるの」





先程までの口調とは違い、幼い子を演じる恵梨華。





「そうだったのか。よかったね〜、気をつけて帰るんだよ?」





男はそういうと恵梨華の頭を撫でて笑顔で去っていった。





男の姿が見えなくなったところで、アンダーテイカーの堪えていた何かがプツリと切れた。





「ぶひゃひゃひゃはははっ・・ヒーッヒッヒ!」





お腹を押さえて笑いこけていた。





恵梨華はため息をつきながらアンダーテイカーを冷たい目で見ていた。





暫くしても笑いは治まらなかった。




恵梨華は呆れてアンダーテイカーを蹴飛ばした。





「いつまで笑ってるのよ。さっさと行きましょ」





「ぶっ・・!ま、待っておくれ〜」





アンダーテイカーは口元を押さえながら恵梨華の後ろをついていった。





「あ〜!いいお天気だわ〜!」





両手を広げ、ゆっくり深呼吸する恵梨華。





「もう少し見た目に合った行動をしておくれよ・・じゃないと小生はまた・・・ヒッ・・イーッヒッヒ」





先程の光景を思い出して笑っているアンダーテイカー。





「悪かったわね。もう何百年と生きてるから見た目と中身が合わないのよ」





「一体君は何歳なんだ〜い?」





ニヤニヤと怪しい笑みを浮かべる。





「フフッ、お母様の葬儀をした時同じ姿だった貴方には言われたくないわ」





「ヒッヒッヒ・・・まぁ確かに小生のが年上だけどねェ」





「あーあ・・・私もアンダーテイカーみたいに成長してから止まって欲しかったわ・・・」





「どんな姿でも恵梨華は恵梨華だと思うけどねェ・・・?」





「この姿は色々めんどくさいのよ」





先程の幼い言葉遣いの恵梨華を思い出すアンダーテイカー。





思わず口元を押さえて必死に笑いを堪えた。





「そこ!また思い出したのね。全く・・・貴方って人は・・」





やれやれといった感じに両手を広げ軽くため息をついた。





「さ〜て、そろそろ小生の店に行こうか」





「ねぇアンダーテイカー?貴方死神なんでしょう?瞬間移動とか出来るのかしら?」





「それは人間が勝手に考えたモノだからねェ〜?・・・でも見えない速度で移動する事は出来るよ」





「あら本当!?見てみたいわ!」





目をキラキラ輝かせ、期待に胸を膨らませている恵梨華。





「(そういう所は少し子供っぽいんだねェ・・・)」





大人っぽい恵梨華、子供っぽい恵梨華。





アンダーテイカーはそのギャップに心惹かれていた。





おもむろに恵梨華を抱きかかえるアンダーテイカー。





「っ・・・!い、いきなりレディになんて事するのよっ」





「見てみたいと言ってきたのは恵梨華だろう?」





顔を近づけて怪しい笑みを浮かべるアンダーテイカー。





前髪の隙間から瞳が見える。





その綺麗な黄緑色に恵梨華はおもわず息を呑んだ。





帽子をそっと取り、アンダーテイカーの前髪をかきわけた。





その顔を見た途端、頬が赤く染まった。





この世のものとは思えない美しさ。





息をするのも忘れそうになるくらい夢中で見つめていた。





「おやおや、悪い子だ。小生が顔を隠しだしてからこの顔を見たのは君が初めてだよぉ?」





その言葉にハッと我に返る恵梨華。





慌てて帽子を荒々しくかぶせた。





「・・・何でそんなにカッコいいのよ・・」





恵梨華は顔をそらしながらボソリと呟いた。
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