長編夢小説

□明けましておめでとう
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「しょ、小生もかい?」





焦ったように言うアンダーテイカー。





対称的にシエルは落ち着いた様子で答えた。





「あぁ。何か問題でもあるか?」





「大有りだよ!」





「(でもアンダーテイカーの女装も・・・見てみたいかも)」





二人の口論を聞いていた恵梨華は、少しだけ期待に満ちた顔をしていた。





「はぁ・・・折角用意させたドレスが台無しじゃないか」





「勝手に用意しておいてなんて言い草だ・・・」





「アンダーテイカー、お前は恵梨華のドレス姿を見たいと思わないのか?」





シエルの言葉にアンダーテイカーは少し戸惑った。





「だ、だけど何で小生が犠牲にならなきゃいけないのさ」





これから死神達に挨拶に行かなくてはならない。





先輩の自分が女装なんて格好をしていたら、後輩の死神達に示しがつかない。





それに、愛しい恋人にそんな恥ずかしい姿を見られたくなかった。





アンダーテイカーは、恵梨華のドレス姿を見たい気持ちと、それの代償で頭を悩ませていた。





「恵梨華、お前はどうしたらドレスを着てくれるんだ?」





「うーん・・・じゃ、じゃあ・・・!」





恵梨華はシエルの元に駆け寄ると、そっと耳打ちをした。





それを聞いてシエルは複雑そうな表情を浮かべていた。





「・・・分かった。すぐに用意させる、セバスチャン!」





シエルはセバスチャンに何か言うと、セバスチャンはそのまま部屋を後にした。





「(・・・恵梨華、一体君は伯爵に何をお願いしたんだい・・・?)」





女装しろと言われて動揺しているアンダーテイカーは不安で胸がいっぱいだった。










しばらくするとセバスチャンが帰ってきた。





「葬儀屋さん、こちらへどうぞ」





アンダーテイカーは肩を落としながら、セバスチャンの後をついていった。





「恵梨華の着替えはメイリン、頼んだぞ」





「は、はいですだ!」





恵梨華はメイリンに連れられて、部屋を後にした。





しばらくすると、メイリンと恵梨華が帰ってきた。





ガチャリと部屋のドアが開く。





シエルはドアの方を向くと、顔を真っ赤にして目を見開いて思わず立ち上がった。





黄緑色の燐光を放つ魅惑的な瞳。





流れるように美しい艶々とした長い黒髪。





そして・・・いつもとは違うピンク色のドレス。





妖艶な恵梨華の姿にシエルは静かに息を呑んだ。





「へ、変じゃないかな・・・?私みつあみ出来なくてまだ結んでないんだよね」





お風呂に入ってきたのだろう、恵梨華は先程まで結んでいたみつあみがなかった。





「わ、私もみつあみはしたことがなくて・・・すみませんですだっ」





メイリンが慌てて頭を下げた。





「気にしなくていいよ。それよりアンダーテイカーはまだなのかな?」





恵梨華に魅了されていたシエルだったが、”アンダーテイカー”という言葉に我に返った。





「・・・そろそろ来る頃だろう」





シエルがそう言うと、部屋のドアが静かに開かれた。





「お待たせ致しました、坊ちゃん」





「あぁ・・・意外と時間がかかったな」





「えぇ・・・葬儀屋さんが最後まで抵抗なされたので・・・」





セバスチャンは呆れたように後ろにいるアンダーテイカーに視線を送った。





恵梨華たちからはアンダーテイカーの姿がまだ見えていなかった。





「いつまでそうしているのですか?往生際が悪いですよ」





セバスチャンが冷たい視線を送った。





「しょ、小生はこんな・・・!」





恵梨華たちの見えないところでモジモジしているアンダーテイカー。





シエルは眉を寄せてセバスチャンに命令した。





「セバスチャン!早くアンダーテイカーをここに連れて来い!」





「イエス・マイロード」





セバスチャンは跪いて一礼すると、アンダーテイカーの元へ向かった。





そしてアンダーテイカーのベルトを掴んで持ち上げた。





まるで猫でも運ぶような体勢。





そのまま部屋の中へと入ってきた。
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