長編夢小説

□とある死神の初恋
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「はぁ・・・」





アンダーテイカーの事を思うと思わずため息が出た。





今までこんなに人を好きになった事がない恵梨華はどうしたらいいのか分からない。





恵梨華にとって初めての恋だった。





「アンダーテイカー・・・アンダーテイカー・・・」





「小生を呼んだかい?」





恵梨華はその声に驚き、柩から落ちてしまった。





無意識のうちに名前を呼んでいたのを聞かれてしまい、恥ずかしくてアンダーテイカーを見る事が出来ない。





「おやおや、驚かせるつもりはなかったんだけどねェ・・?大丈夫かい?」





恵梨華に手を差し伸べるアンダーテイカー。





しかし恵梨華はそれに気がつかない。





耳まで真っ赤にしながら俯いていた。





「ヒッヒ・・・君は床が好きなのかい?」





その言葉に思わず顔を上げる恵梨華。





「やっと小生を見てくれたねェ?・・・君、名前は?」





「・・・恵梨華・・・です・・・」





「恵梨華・・・いい名前だ。それと、敬語はいらないよぉ?」





「あ・・・うん・・・」





あまりアンダーテイカーを直視出来ない恵梨華。





思わず視線をそらしてしまう。





「とりあえず傷の手当てをしよう。肩を出してごらん?」





少し恥らいながらも、手当てをしてもらう為に肩を出した。





アンダーテイカーは恵梨華の傷口を見るとほっとした様子だった。





「よかった・・・あまり深くはないみたいだ」





アンダーテイカーは器用に手当てをしていった。





恵梨華はそのあまりの手際の良さに、お医者さんなのではないかと思っていた。





「さあ・・・終わったよぉ?」





「あ、ありがとう・・・」





「ヒッヒ・・いいよぉ?よかったらさっき泣いていた理由を教えてくれるかい?」





恵梨華は思い出したかのように悲しそうな顔をしていた。





「私・・・ダメな死神なの・・・」





「そうは見えないけどねェ・・・?」





「この怪我も・・・今日の任務で失敗しちゃったからなの・・・」





恵梨華は肩をそっと押さえた。





「毎日毎日始末書ばっかり書いててさ・・・」





恵梨華の瞳には涙がたまっていた。





「今日も、グレルとウィルが居てくれなかったら・・・どうなってたかわかんない・・・」





必死に振り絞るような声。





体の震えが止まらなかった。





「・・・小生が教えてあげようか?」





恵梨華の話を黙って聞いていたアンダーテイカーが言った。





「え・・・?」





「小生は君が・・・恵梨華がひどく気に入ってねェ・・・放って置けなくなったのさ」





なでなでと頭を優しく撫でられる。





「小生は現役を引退した身・・・でも恵梨華の傍にいられるなら復帰しようかと思ってるんだ」





「・・・・・」





「小生はねェ・・・一目惚れをしてしまったみたいなんだ・・・君を一目見たあの時から・・・」





「で、でも・・・私なんか本当に何をやってもダメで・・・」





アンダーテイカーは恵梨華の唇に人差し指を押し付けた。





「恵梨華が嫌じゃなければ・・・小生の傍にいてくれるかい?」





恵梨華の顔が真っ赤に染まっていった。





「わ、私もアンダーテイカーの事が好き・・なの・・・!」





初めての告白。





震える手を握り締め、勇気を振り絞って言った。





アンダーテイカーはそれを聞くと、満面の笑みを浮かべた。





そしておもむろに立ち上がると、恵梨華に手を差し伸べた。





「早速死神派遣協会に行こうか。話をつけにいかないとねェ」





「でも・・・このお店大丈夫なの?」





「ヒッヒッヒ・・仕事が終わった後にでも営業すればいいさ」





恵梨華は安心したように差し出された手をとった。
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