長編夢小説

□恋する乙女はすてみタックル
2ページ/5ページ

「「ウィル!!」」





二人はその声の主を見た途端、同時に叫んでいた。





「全く・・・バレないとでも思ったのですか?恵梨華、グレル・サトクリフ」





「い、いやぁ〜、そんな事はないけど・・・」





恵梨華は冷や汗をかきながら頭をぽりぽりと掻いていた。





「あぁん☆ウィル〜、今日ダケは見逃してよネ?」





くねくねと色目を使ってくるグレルを無視し、恵梨華の所まで歩いてくるウィリアム。





「それに・・・なんて格好してるんですか・・・貴方は・・・」





ウィリアムは少し頬を赤く染めながら、眼鏡をカチャリと直した。





「じ、時間がなかったのよ・・・!」





困ってる恵梨華を尻目に、ウィリアムは自分の櫛を取り出した。





そして手際よく恵梨華の髪を整えていく。





「ちょっとウィル!恵梨華ばっかりズルイわヨ〜!アタシもやって?」





可愛くウインクをするグレル。





しかしウィリアムはそんなグレルに見向きもしなかった。





どんどん綺麗に整っていく恵梨華の長い黒髪。





太陽に照らされて、その艶やかな黒髪は美しく輝いていた。





「いつ見ても綺麗ですね、恵梨華の黒髪は・・・」





「へ・・・?ウィ、ウィル・・・?」





恵梨華がウィリアムの意外な言葉に思わず後ろを振り返った。





恵梨華の顔を見ると我に返ったウィリアム。





慌てて視線をそらしながら眼鏡をかけなおした。





「と、とにかく、あとできっちりと始末書を書いてもらいますよ、二人とも」





「・・・ちぇー」





恵梨華は口を尖らせて拗ねた。





グレルはそんな恵梨華の肩をポンッと叩いた。





「しょうがないわヨ。さ、行きまショ?」





ニコリと恵梨華に微笑みかける。





そんなグレルに恵梨華の顔も自然と笑顔になっていった。





「あ・・・髪の毛直してくれてありがとうね、ウィル」





恵梨華が満面の笑みを浮かべてウィリアムにお礼を言った。





するとウィリアムは恵梨華に見惚れてしまい、その場で固まってしまった。





「ウィル・・・?」





そんなウィリアムを不思議に思ったのか、恵梨華はウィリアムに声をかけた。





「ちょっと恵梨華〜?早くリスト貰いに行きまショ?」





グレルは恵梨華がウィリアムに構っているのが気に入らないのか、急かす様に声をかけた。





「あ、うん!」





恵梨華はグレルに急かされるがまま、エントランスを後にした。





一人取り残された可哀相なウィリアム。





暫くその場に立ち尽くしていたが、ハッと我に返り、その場を静かに後にした。


















「え?今日は魂の回収任務じゃないのー?」





窓口に響く恵梨華の声。





「え、えぇ・・・本日恵梨華さんとグレルさんには、別の任務をお願いしたいとウィリアムさんが・・」





「・・・さっきそんな事一言も言ってなかったわよネ?」





「むぅ〜・・・ウィルってば意地悪なんだからぁ〜!」





恵梨華は不貞腐れたように頬を膨らませていた。





「アラアラ・・・可愛い顔が台無しヨ?」





グレルは恵梨華の両頬に手を当て、中の空気を抜くように押した。





ぷしゅー・・





恵梨華は風船の空気が抜けたような音を出していた。





「さ、行きまショ?きっとウィルが今頃管理室でご立腹ヨ?」





「嫌な予感がするんだよねー・・・こういう時って」





恵梨華は嫌そうな顔をすると、大きくため息をついた。





「まぁネ・・・でも通常任務が与えられない以上、ウィルの所へ行くしかないジャナイ?」





恵梨華はしぶしぶグレルの後に続いた。





コンコン・・・





管理室のドアを叩く。





恵梨華は中に入ると、眉を寄せた。





カシャカシャカシャ・・・





嫌な音が規則正しく響き渡る部屋。





恵梨華はこの空気が嫌いだった。





「遅かったですね。恵梨華、グレル・サトクリフ」
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ