長編夢小説
□恋する乙女はすてみタックル
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「「ウィル!!」」
二人はその声の主を見た途端、同時に叫んでいた。
「全く・・・バレないとでも思ったのですか?恵梨華、グレル・サトクリフ」
「い、いやぁ〜、そんな事はないけど・・・」
恵梨華は冷や汗をかきながら頭をぽりぽりと掻いていた。
「あぁん☆ウィル〜、今日ダケは見逃してよネ?」
くねくねと色目を使ってくるグレルを無視し、恵梨華の所まで歩いてくるウィリアム。
「それに・・・なんて格好してるんですか・・・貴方は・・・」
ウィリアムは少し頬を赤く染めながら、眼鏡をカチャリと直した。
「じ、時間がなかったのよ・・・!」
困ってる恵梨華を尻目に、ウィリアムは自分の櫛を取り出した。
そして手際よく恵梨華の髪を整えていく。
「ちょっとウィル!恵梨華ばっかりズルイわヨ〜!アタシもやって?」
可愛くウインクをするグレル。
しかしウィリアムはそんなグレルに見向きもしなかった。
どんどん綺麗に整っていく恵梨華の長い黒髪。
太陽に照らされて、その艶やかな黒髪は美しく輝いていた。
「いつ見ても綺麗ですね、恵梨華の黒髪は・・・」
「へ・・・?ウィ、ウィル・・・?」
恵梨華がウィリアムの意外な言葉に思わず後ろを振り返った。
恵梨華の顔を見ると我に返ったウィリアム。
慌てて視線をそらしながら眼鏡をかけなおした。
「と、とにかく、あとできっちりと始末書を書いてもらいますよ、二人とも」
「・・・ちぇー」
恵梨華は口を尖らせて拗ねた。
グレルはそんな恵梨華の肩をポンッと叩いた。
「しょうがないわヨ。さ、行きまショ?」
ニコリと恵梨華に微笑みかける。
そんなグレルに恵梨華の顔も自然と笑顔になっていった。
「あ・・・髪の毛直してくれてありがとうね、ウィル」
恵梨華が満面の笑みを浮かべてウィリアムにお礼を言った。
するとウィリアムは恵梨華に見惚れてしまい、その場で固まってしまった。
「ウィル・・・?」
そんなウィリアムを不思議に思ったのか、恵梨華はウィリアムに声をかけた。
「ちょっと恵梨華〜?早くリスト貰いに行きまショ?」
グレルは恵梨華がウィリアムに構っているのが気に入らないのか、急かす様に声をかけた。
「あ、うん!」
恵梨華はグレルに急かされるがまま、エントランスを後にした。
一人取り残された可哀相なウィリアム。
暫くその場に立ち尽くしていたが、ハッと我に返り、その場を静かに後にした。
「え?今日は魂の回収任務じゃないのー?」
窓口に響く恵梨華の声。
「え、えぇ・・・本日恵梨華さんとグレルさんには、別の任務をお願いしたいとウィリアムさんが・・」
「・・・さっきそんな事一言も言ってなかったわよネ?」
「むぅ〜・・・ウィルってば意地悪なんだからぁ〜!」
恵梨華は不貞腐れたように頬を膨らませていた。
「アラアラ・・・可愛い顔が台無しヨ?」
グレルは恵梨華の両頬に手を当て、中の空気を抜くように押した。
ぷしゅー・・
恵梨華は風船の空気が抜けたような音を出していた。
「さ、行きまショ?きっとウィルが今頃管理室でご立腹ヨ?」
「嫌な予感がするんだよねー・・・こういう時って」
恵梨華は嫌そうな顔をすると、大きくため息をついた。
「まぁネ・・・でも通常任務が与えられない以上、ウィルの所へ行くしかないジャナイ?」
恵梨華はしぶしぶグレルの後に続いた。
コンコン・・・
管理室のドアを叩く。
恵梨華は中に入ると、眉を寄せた。
カシャカシャカシャ・・・
嫌な音が規則正しく響き渡る部屋。
恵梨華はこの空気が嫌いだった。
「遅かったですね。恵梨華、グレル・サトクリフ」