長編夢小説

□現役時代のアンダーテイカー
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体が言う事を聞かない。





何度か本棚に戻そうと試みるが、手がそのアルバムを離そうとしなかった。





「・・・・・ダメだ、このままじゃ気になってしょうがない・・!」





恵梨華は本能に逆らう事が出来ず、仕方なくそのアルバムを開いてみる事にした。





ドクン・・・ドクンッ・・・





耳まで聞こえる心音。





額からはポタリと一筋の汗が流れた。





緊張の瞬間だった。





恵梨華はゴクリと生唾を飲んだ。





そしてゆっくりとした手つきでそのアルバムのページを開いた。





「っ・・・・・!」





開かれたページにある写真を見て、恵梨華は言葉を失っていた。





「(こ、これがあのアンダーテイカー・・・!?)」





今のアンダーテイカーからは考えられないほど冷たい瞳。





まるで狩りを楽しむ獣のような瞳だった。





そしてそのアルバムの写真の殆どが、服にべっとりとどす黒い血がついていた。





返り血を浴びたのだろう、顔にまで飛び散っているのもある。





所々赤く染まった銀色の髪。





握られたデスサイズから滴る生々しい血液。





普通の死神なら血塗れなんて似合わない。





しかし、彼の美しすぎる姿には似合ってしまっているのだ。





ぞくぞくするような感覚、恵梨華の興奮は最高潮だった。





恵梨華の黄緑色の燐光が一層強く輝いた。





「(あぁっ・・・こんなアンダーテイカーになら殺されてもいい・・・!)」





恵梨華は常人には分からないような考えに至っていた。





「ハァ・・ハァ・・・・・」





呼吸が乱れる。





恵梨華は心臓の辺りの服をギュッと握り締めた。





そして乱れる呼吸を整えるかのように大きく深呼吸をした。





「すぅ・・・・はぁ・・・・」





何度か深呼吸を繰り返していると、落ち着きを取り戻した。





そしてそのアルバムの中から一枚だけ写真を抜き取ると、そっとポケットに仕舞った。





「(一枚くらいなら・・・大丈夫だよね・・・!)」





罪悪感を感じながらも、その写真が欲しいという欲求の方が勝っていた。





「(過去も現在も未来も・・・いつのアンダーテイカーも私のモノだよ・・・!)」





恵梨華はニヤニヤしながら、そっと本棚にアルバムを戻した。





そして遅れを取り戻すかのように急いで部屋を掃除する。





「はぁ・・・ふぅ、こんなもんでしょ」





パンパンッと手を払いながら恵梨華は掃除を無事終えた。





そしてパタパタと音を立てながら、アンダーテイカーのもとへと向かった。





「アンダーテイカー、待った?・・・おわっ!」





恵梨華が扉を開けた途端、勢いよくアンダーテイカーが飛び掛ってきた。





「遅かったねぇ・・?」





ギュッと抱きしめる腕に力を入れるアンダーテイカー。





恵梨華の服や体は、血でべとべとになっていた。





思わずアンダーテイカーを引き離そうとする恵梨華。





「ちょ、ちょっと・・・!くっつくならせめて血ぐらい拭いてよ・・・!」





ぐいっとアンダーテイカーの胸の辺りを押した。





「いやぁ〜、恵梨華が遅いから寂しくなってねぇ・・?」





ぽりぽりと頭を掻くアンダーテイカー。





その綺麗な銀色が赤く染まっていく。





恵梨華はその姿が、先程の写真のアンダーテイカーとダブって見える。





「っ・・・!///」





頬を真っ赤に染めながら、アンダーテイカーから目を離す事が出来ない。





アンダーテイカーは恵梨華にじっと見つめられ、不思議そうに首を傾げた。





「・・・どうしたんだい?」





「あ・・・い、いや・・・」





恵梨華は思わず視線をそらした。





そして上気した頬を両手で押さえ、落ち着かせるように深呼吸をする。





「怪しいねェ〜?ヒッヒッヒッ」





ニタリと笑いながら恵梨華の顔を覗くアンダーテイカー。





とても挑発的な瞳だった。





そんなアンダーテイカーと目が合う。





恵梨華は血で汚れる事も忘れ、思わずアンダーテイカーに抱きついた。





「ん〜?いいのか〜い?汚れてしまうよ?」
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