長編夢小説

□魂より大切なもの
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「ん?お前は・・・アンダーテイカーか?」





シエルは馬車の前に立つ恵梨華に向かって言った。





恵梨華は慌ててシエルのもとへと駆け寄った。





「シエル!お願い!アンダーテイカーの店に連れてって!」





シエルは困惑の色を隠せなかった。





突然アンダーテイカーの格好をした見ず知らずの女に名前を呼ばれたのだから。





しかもその女が、あの怪しい店に連れて行けと言うのだ。





混乱したシエルは言葉を発することなく、固まってしまった。





見兼ねたセバスチャンが恵梨華に声をかけてくる。





「それにしてもお嬢様、どこで坊ちゃんの名前を・・・?」





「・・・信じてもらえないかもしれないけど・・・」





とにかく恵梨華は今までの出来事を必死に話した。





恵梨華の切羽詰った感じがシエルやセバスチャンにも伝わったのか、二人は恵梨華を信用してくれた。





「ありがとう・・・シエル、セバスチャン」





恵梨華は涙を浮かべながら二人に感謝をした。





話すことに夢中になっていた恵梨華だったが、ふとシエルの胸の辺りを見た。





ぽおっと何かが光っている。





今までに見たことがない神秘的な光だった。





思わず恵梨華はシエルに問いかけた。





「ねぇシエル?その胸の辺りの光ってるのなぁに?」





「光ってる・・・?何も無いが?」





シエルは何の事を言っているのか分からず首を傾げた。





しかしセバスチャンは違った。





恵梨華の発言にピクリと眉を動かした。





「まぁ、こんなところで話してるのもあれだしな。セバスチャン、奴の店に行くぞ」





「イエス・マイロード」





恵梨華は馬車に乗せてもらい、アンダーテイカーの店まで連れて行ってもらった。





馬車が止まると、恵梨華は待ち切れない様子で外に出た。





「おー・・・!本物はすごいね・・・!」





まるで遠足に来た子供のように無邪気にはしゃぐ恵梨華。





シエルとセバスチャンは、そんな恵梨華を温かい目で見ていた。





そしてシエルはゆっくりと店の扉を開いた。





「いるか?アンダーテイカー」





「ヒッヒッヒ・・・いらっしゃい。やっと小生特製の柩に入ってくれる気になったんだね・・・!」





「そんなワケあるか・・・今日は・・・」





「おやぁ〜?珍しいお客さんだねェ〜?」





アンダーテイカーは人差し指を唇に当てながら恵梨華を見ていた。





「(ほ、本物・・・!本物のアンダーテイカーだ・・・!)」





恵梨華は思わずアンダーテイカーに抱きついた。





「アンダーテイカー・・・!アンダーテイカー!会いたかったよアンダーテイカー!」





「おわっ・・・!」





突然自分と同じ格好をしている子に抱きつかれ、アンダーテイカーはどうする事も出来なかった。





「・・・恵梨華、そのぐらいにしてやれ」





シエルの言葉で正気に戻った恵梨華は、慌ててアンダーテイカーを解放した。





「ご、ごめんね?アンダーテイカー。嬉しくてつい・・・」





「ぐふふ・・・伯爵〜?どういうことか説明しておくれ?」





シエルはセバスチャンに合図を送り、セバスチャンに事情を説明させた。





「ぶっひゃっはっはっははは!ぎゃーっはっは!ぐふふ・・・も・・・やめ・・・ヒィ〜」





案の定、大爆笑のアンダーテイカー。





床に転がりながらだらしなく涎を垂らしていた。





そんなみっともない姿ですら、恵梨華にとっては愛おしく思えて仕方が無かった。





優しい眼差しでアンダーテイカーを見つめる恵梨華。





するとやはり胸の辺りに光っているものが見える。





シエルの胸にも見える光るもの。





しかしセバスチャンの胸にはそれがない。





訳が分からず、恵梨華はアンダーテイカーに問いかけた。





「ねぇアンダーテイカー?シエルやアンダーテイカーの胸の辺りに光ってるものがあるんだけど・・・」





その言葉を聞いた途端、大爆笑していたアンダーテイカーの笑いがピタリと止まった。





急にシーンとする店内。





「やはり・・・そうでしたか・・・」
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