頂き物

□夢幻狂騒曲
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恵梨華は、思い出していた。




ズタボロの情けない姿の自分の前で、余裕綽々と葬儀屋の唇を奪い、あまつさえ大人のキスまで見せつけた、あの鬼畜死神―――。





「〜〜〜〜っ!!!」


「恵梨華〜?」





沸々と湧いてくる怒りの感情。その矛先は、当然目の前の葬儀屋へと向けられる。





「もしかして、夢の中で…あんなコトとか、こんなコトとか…されちゃったの?」



「い、いや〜。あんなコトとか、こんなコトって…一体どこまでのコトなんだか…?」






確かに葬儀屋の言う通りだが、イライラがMaxまで上がった恵梨華には逆効果だった。





「なんか、ムカムカしてきた!」



「は〜?ちょ、…恵梨華?」





興奮した恵梨華は、葬儀屋の胸ぐらを鷲掴みにすると、ぶんぶんと前後に体を揺さぶる。




「彼女である僕の前で、よくもあんなコトを〜〜〜っ!!」





葬儀屋が宥めようとするものの、興奮した恵梨華は手が付けられなかった。






「だ、だから、少し落ち着きな…って、…うわぁぁ…!!?」





バフッ…!





体を揺すられ、そのままバランスを崩した二人は、そのまま縺れるように、シーツの上へとなだれ込む。




結果、葬儀屋は恵梨華に押し倒された体勢で、完全に組み敷かれていた。





「これが落ち着いてられますか!一度ならず二度までも、僕のアンダーテイカーを弄ぶなんて…!」



「…今回は夢だし、それは若干意味が違うんじゃ?…って、……え、恵梨華?何で小生の夜着を剥いでいるんだ〜い?」





気付くと、夜着のボタンは外され、胸元が大きく開かれていた。




「何って、決まってるでしょ!」



「き、決まってるって…」



「さっき自分で言ったじゃない」




そこまで話すと、何故か恵梨華は顔を真っ赤にして口籠る。





「/////だ、だから…その、…恵梨華で…満たされたい…って」





その言葉で、葬儀屋の唇が大きな弧を描く。





「じゃあ、お言葉に甘えて遠慮なく―――」





葬儀屋が何時ものように、恵梨華の頬に触れ、その手を彼女の肩に伸ばしかけた時―――。






「ただし…!」


「…っ!?」





恵梨華の厳しい声が上がった。





「自由にされるのは、恵梨華じゃなくて、テイカーの方だからね!」



「な、なぜに!?」





予想だにしない展開に、葬儀屋は戸惑いを隠せない。しかし、そんな葬儀屋を見下ろしたまま、恵梨華は悠然とした態度で言葉を続ける。




「当たり前でしょ?そんな夢を見るなんて、テイカーにも責任あるし」



「べ、別に小生は見たくて見たわけじゃ」



「つべこべ言うなし!夢はその人の深層心理を映すって言われてるんだから!」



「ちょ、ちょっとお待ちって!もしかして、君が上で…小生が下…なのか…い?」



「フフッ…いい眺め」







ゾクッ―――!






唇を吊り上げて微笑む恵梨華は、まるで小悪魔のように可愛く見えた。葬儀屋の鼓動は自然と早まり、これから彼女に施されるであろう愛の行為に、期待で胸躍らせるのであった。









ああ、もう可愛いねぇ。

これは、つまり…

夢に嫉妬してるってコトだよね?





あの腐れ天使に押し倒された時は

吐き気がするほど嫌だったけど

君に押し倒されるのは

なんだかイイ感じがするよ。

女性を上に乗せて…なんて

試したことは無いけれども

恵梨華になら何をされても構わないし

ドコをどうされても

イイと思えるから不思議だよねぇ。





どうせ最後に根を上げるのは

どう考えても君の方だし

小生は君の気が済むまで

その艶めかしい姿を

下から、じっくり眺めて

存分に堪能することにするよ。





綺麗な髪を振り乱して

その唇から可愛い嬌声を上げ

小生の上で身悶える艶やかな姿

いつも大人しめの君が

激しい嫉妬に駆られて

小生の全てを貪ろうとする姿は

想像しただけで体が熱くなる。







―――そうさ、冗談じゃないよ。

なんで小生が野郎なんかと

交わらなきゃいけないんだい?

何故あんな気色の悪い夢を

見たのかも分からないし

深層心理なんて、謎だけど…。

これだけは、はっきりしてるよ。






小生が欲しいと望むのは君だけ

触れて欲しいと願うのも君だけ

そして、この魂をかけても

愛し守り抜くと誓ったのも

生涯でただ一人、恵梨華、君だけさ。









P.S―――。

ヒッヒッ…君の気が済むまで

付き合ってあげるから

だから、君の気が済んだ後は

小生の気が済むまで

付き合ってもらうよ〜




☆おしまい☆
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