連載夢小説T
□小さなお客さんV
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「それよりアンダーテイカー、その武器もっとよく見たいわ」
好奇心旺盛の恵梨華はアンダーテイカーのデスサイズに興味津々だった。
「ん〜?コレかい?」
アンダーテイカーは恵梨華をそっと降ろすと、デスサイズを近づけた。
「この髑髏の部分・・・美しいわ・・!スベスベしてて触り心地も抜群ね」
「ぐふっ・・・恵梨華に褒められるなんて、小生のデスサイズも喜んでいるよぉ」
「ちょっと持ってみたいわ!貸して頂戴」
アンダーテイカーは少し困った様子だった。
「いいけど・・・恵梨華には少し重いかもしれないよ?」
「何言ってんのよ。そんな片手で軽々と持てるモノなら私にだって持てるわよ」
「でも小生は死神で・・・」
それでも心配なアンダーテイカーはオドオドしていた。
「いいから早く貸して頂戴よ!」
恵梨華の命令に逆らえるはずもなく、アンダーテイカーはしぶしぶ恵梨華の手にデスサイズを置いた。
「いいかい?気をつけておくれよ?」
「分かってるわよ」
アンダーテイカーの指が、ゆっくりとデスサイズから離れた。
途端に恵梨華の両手に物凄い衝撃がきた。
手を下にしていた為、恵梨華はそのデスサイズを放す事が出来ない。
そのまま勢いよく屋根の下へと落ちていった。
「恵梨華!?」
「きゃぁぁあああッ!」
恵梨華の断末魔が静かなロンドンに響いた。
すると大人しくしていたグレルがギザギザの歯をむき出しにしながら笑った。
「あーあ、アレじゃー助からないワネ♪」
「滅多なコトを言わないでおくれよ・・・!」
アンダーテイカーは慌てて屋根から飛び降りた。
グレルはしぶしぶと言った感じでアンダーテイカーの後をついていった。
「恵梨華・・・恵梨華・・・?しっかりしておくれよ!」
愛しい恋人のあまりにも無残な姿。
いつも惨殺死体を検死しているアンダーテイカーだが、恋人のそんな姿を直視する事は出来なかった。
ポタポタと透明な液体が恵梨華の身体に零れ落ちる。
「恵梨華・・・」
「葬儀屋さん・・・残念だけどソレ・・・もう死んでるわヨ・・・」
アンダーテイカーの悲しみように同情したのか、グレルが静かに言った。
「そんな・・・恵梨華・・・恵梨華・・・!」
小さな身体を優しく抱きしめる。
「目をあけておくれよ・・・恵梨華・・!」
すると恵梨華の眉がピクリと動いた。
「・・・うるさいわね」
身体中についていた傷がみるみるうちに消えていく。
恵梨華は鬱陶しそうにアンダーテイカーの腕を退けた。
「う・・・そ・・・・でしょ・・・?」
その様子を見ていたグレルが、信じられないといった表情をしていた。
「ああ・・・無事でよかったよ・・・恵梨華・・・」
「アンダーテイカー・・・アナタは私が死ねない身体だって知ってるでしょう?」
恵梨華は立ち上がると未だに座り込んでいるアンダーテイカーを見下した。
「それでも・・・不安だったんだよ・・・」
美しい黄緑色が動揺したように揺れている。
恵梨華は小さくため息をつくと、アンダーテイカーの頭をそっと撫でた。
「まぁ・・・・恋人を心配するその心がけは褒めてあげるわ」
冷たいロンドンの街の一角、恵梨華とアンダーテイカーの空気は暖かかった。
そんな甘い雰囲気を邪魔するように、グレルが恵梨華の胸倉を掴んで持ち上げた。
「アンタ・・・何者なのヨ・・!」
そんな行動を見逃さなかったアンダーテイカー。
死神の瞳がギラリと輝くと、近くにあったデスサイズを握りその刃をグレルの喉元に宛がった。
「その手を放してもらおうか」
つぅっとグレルの喉に生暖かいものが伝う。
身の危険を感じたグレルは、恵梨華をその場にそっと下ろした。
地面に降ろされた恵梨華は、不敵な笑みを浮かべた。