連載夢小説T
□小さなお客さんX
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「恵梨華の気配が・・・消えた・・・」
その表情に焦りが見える。
「消えたって・・・人間界に帰ったんジャナイの?」
「違う・・・さっきまで街の方を歩いていたんだよ・・・」
葬儀屋の脳裏に嫌な予感がよぎる。
「ま、まさか・・・幻影の森に迷い込んだんじゃ・・・!」
「幻影の森・・・?」
「君も聞いたコトくらいはあるだろう?死神界に在るその森のコトを・・・」
「で、でもその森って・・・!」
静かな図書館に緊張が走った。
「通称死の森。本来その森は失恋した死神達が迷い込む森と言われてるんだけどねェ・・」
「ソ、ソーヨ!なら、失恋してない恵梨華には危害を加えないんジャ・・?」
葬儀屋の額から一筋の汗が流れた。
「いいかい?あの森は想い人が幻影となって現れる森なんだ」
自分を落ち着かせるようにグレルに説明する葬儀屋。
「その幻影は想い人が真逆の形となって現れる・・・つまり、冷たい想い人は優しくなるのさ・・・」
「恋に破れた死神達は・・・だからあの森から出てこられないのネ・・・」
「そう、そしてその死神達の養分を取り込み森は成長し続ける・・・」
「チョ、チョット!恵梨華の想い人って・・・!」
「・・・小生だとしたら・・・その現れる小生は・・・」
二人は顔を合わせてゴクリと息を呑んだ。
「「恵梨華のコトを憎んでる・・!」」
葬儀屋とグレルは慌てて図書館を飛び出した。