連載夢小説U

□魂より大切なものU
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「ヒッヒッヒ・・・君はほ〜んとに面白い子だねェ〜?」





一頻り笑い終えた葬儀屋が落ち着いた様子で恵梨華の隣に腰掛けた。





「だって好きなんだもん・・・」





拗ねたように口を尖らせ、フイッとそっぽを向いてしまう恵梨華。





そんな微笑ましい光景に、葬儀屋の瞳は優しく細められた。





「あっ・・・カツラ被らないと・・・!」





脱ぎっぱなしだった事に気付いた恵梨華。





慌てて置いてあった銀色のカツラを被った。





「・・・君の黒髪はとても綺麗だと思うけどねぇ〜?」





何よりもカツラを被ってしまうと、恵梨華の顔は隠れてしまう。





葬儀屋は少しガッカリしたように肩を落とした。





「ふふ・・・・ヒッヒッヒ〜、どうだい?似てるだろう?」





ニタリと笑う恵梨華。





「ブフッ!ギャーッハッハッハッハ!小生の真似かい!?」





「うまいでしょ?結構練習したんだよ」





「ぐふふ・・・小生を笑い殺す気か〜い?ヒッヒッ」





お腹を押さえ苦しそうに呼吸している葬儀屋。





しかし今の恵梨華はその姿をよく見る事が出来ない。





何故なら、カツラを被ってしまうと殆ど視界が奪われてしまうからだ。





折角愛しい葬儀屋に会えたのに、その姿が見れないのは悲しい。





「うーん・・・ねぇアンダーテイカー?アンダーテイカーはそんな長い前髪してて、見えてるの?」





「ん?・・・ま、小生はド近眼だからねぇ・・元々そこまで見えているワケじゃないのさ」





「ふーん・・・やっぱり目に頼ってるようじゃまだまだ青いんだね・・・」





困った恵梨華は顎に手を当て何かいい方法がないかと考えた。





するとピーンッといいアイデアが思い浮かぶ。





「そーだ!」





一旦カツラを取ると、ごそごそと修正をかける恵梨華。





恵梨華の不思議な行動に、葬儀屋は興味津々の様子で見つめていた。





「じゃじゃーん!」





カツラを被り直し、Vサイン。





恵梨華のドヤ顔が見える。





そう、いつもの前髪を隠している葬儀屋ではなく、素顔を見せている時の葬儀屋風にしたのだ。





これなら視界は奪われず、なおかつ葬儀屋のコスプレをしていられる。





「あぁっ・・・これでアンダーテイカーの姿もばっちり見えるよ・・!」





恍惚な表情で愛おしそうに葬儀屋を見つめる恵梨華。





紅の美しい瞳が優しく細められる。





そんな恵梨華をポカーンとした顔で見ていた葬儀屋。





「ヒヒヒッ、よくわからないけど、その方が小生にとっても好都合だよ」





「え?なんで??」





「ぐふっ・・・・・・ほら」





葬儀屋の両手が恵梨華の頬を包み込んだ。





唇と唇が触れてしまいそうな距離で美しい黄緑色に見つめられる。





「君の綺麗な顔がちゃ〜んと見えているからね」





色気のある低い声で囁かれると、恵梨華は慌てて葬儀屋の両手を払った。





そしてくるりと後ろを向くと、しゃがみ込み、手で顔を覆っていた。





「(や、やばいやばい・・・!鼻血出ちゃうよ・・・!)」





耳まで真っ赤になっている。





思考回路がおかしくなってしまったのか、頭から湯気のようなものが出ているようにも見える。





葬儀屋は追い討ちをかけるように、そんな恵梨華を後ろからふわりと包み込んだ。





「ああ・・・そんなに可愛い反応をしないでおくれよ・・・」





恵梨華の耳に葬儀屋の熱い吐息がかかる。





「・・・苛めたくなってしまうだろう?ヒッヒッ」



-つづく-
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