短編夢小説V

□その色気は猫になっても変わらないT
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いくら揺さぶっても動かない葬儀屋。





恵梨華の瞳から大粒の涙が零れ落ちた。





「嫌・・・いやぁああ・・!!アンダーテイカー!」





その姿はあまりにも痛々しく、セバスチャンはそんな恵梨華を見ていられなかった。





「恵梨華さん・・・」





恵梨華を後ろからギュッと抱きしめるセバスチャン。





抱きしめられた恵梨華の身体は、小刻みに震えていた。





「セバ・・・・スチャン・・・・」





「ご安心ください。葬儀屋さんなら大丈夫ですから・・・」





恵梨華を安心させるため、出来る限り優しい声を出すセバスチャン。





しかし恵梨華の不安は消えなかったのか、その瞳は揺れていた。





「では・・・葬儀屋さんをベッドに運びますよ」





「うん・・・ありがとう、セバスチャン」





セバスチャンが葬儀屋の身体を抱きかかえた。





そしてベッドのある部屋へと向かう。





恵梨華はセバスチャンの足元をトコトコついてきていた。





「(はぁ・・・まさか恵梨華さんより先にこの方を抱きかかえる事になるとは・・・)」





いくら恵梨華のためとはいえ、男を抱きかかえる事に嫌悪感を感じるセバスチャン。





セバスチャンは恵梨華に気付かれないように、深い深いため息をついた。





肝心の恵梨華はというと、セバスチャンの足元でその胸をドキドキさせていた。





「(アンダーテイカーの髪・・・綺麗・・・)」





セバスチャンが歩くたびに揺れる銀色の髪。





長くてサラサラしていて、恵梨華はその様子を目を輝かせながら見ていた。





長い長い廊下を歩き続け、漸く目的の部屋にたどり着いた。





セバスチャンは部屋に入ると早々に葬儀屋をベッドに寝かせた。





そして深刻そうな表情を浮かべる。





「恵梨華さん・・・一つお話したい事が・・・」





「ん・・・?なぁに?」





恵梨華はピョンッと葬儀屋が眠っているベッドに飛び乗った。





「今日葬儀屋さんに行った方法ですが・・・この方法では恵梨華さんの身体は耐え切れないかと思います」





「・・・アンダーテイカーが気を失っちゃうくらいだもんね・・・」





「ええ。・・・・恵梨華さんには、別の方法を考えておきますね」





「うん・・・ごめんね、迷惑ばっかりかけちゃって・・・」





恵梨華が申し訳無さそうな表情を浮かべていると、セバスチャンはニッコリと微笑んだ。





「迷惑だなんて・・・とんでもありませんよ。ふふ・・・では、私は仕事がありますのでこれで・・・」





丁寧にお辞儀をすると、セバスチャンはそのまま部屋を後にした。





部屋に残された恵梨華は、葬儀屋の胸の辺りに飛び乗った。





「アンダーテイカー・・・早く目を覚ましてね・・・」





そのままそこで丸まる恵梨華。





その大きな瞳は静かに閉じられていった。





暫くすると、気を失っていた葬儀屋が目を覚ました。





「んん・・・ここは・・・?」





葬儀屋は起き上がろうとするが、ふと胸の辺りに重みを感じた。





そして視線を移すと、その顔がふわりと優しい笑顔に変わっていった。





「おやおや・・・ヒッヒ・・心配をかけてしまったみたいだねぇ・・・」





葬儀屋は愛おしそうに胸の上で眠っている恵梨華をそっと撫でた。





その綺麗な瞳が優しく細められる。





「さ〜て・・・この方法は君には無理のようだからねえ・・・」





あの時感じた苦痛を思い出しながら苦笑いする葬儀屋。





小さな溜め息をつきながら、葬儀屋は再び目を瞑った。



-つづく-
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