短編夢小説V

□その色気は猫になっても変わらないU
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結局、恵梨華を元に戻す方法が見つかるまで店で待機する事になった二人。





店に到着するなり、葬儀屋は大きな溜め息をついた。





「はぁ〜・・・小生だけ元の姿に戻ってもねェ・・・」





葬儀屋は椅子に座りながら恵梨華の事を撫でていた。





「ん・・・でも元に戻れてよかったじゃん!?」





恵梨華が葬儀屋の顔を見上げると、その瞳は悲しみの色に染まっていた。





「・・・君が元に戻ってくれなければ意味がないよ・・・」





「アンダーテイカー・・・」





自分の事を本当に心配してくれる葬儀屋に、恵梨華は心が温まる思いだった。





しかし次の瞬間、恵梨華のその思いは無残にも踏みにじられた。





「恵梨華がもし戻れなかったら・・・小生は欲求不満で死んでしまうよぉ・・!」





「・・・・・そっち!?」





恵梨華は思わず声を荒げた。





そんな時、店にセバスチャンが現れた。





「やあ執事クン。何の用だい?」





「いえ、私の力を持ってしてもあまりにも方法が見つからないので・・・恵梨華さんで癒されようかと」





いささか疲れたような顔で店に入ったかと思うと、一瞬で恵梨華の目の前に移動していた。





「わっ・・・び、びっくりした・・・。で?手掛かりとかは見つかったの?」





先程までゆっくりと座っていた恵梨華は、ビクっとなり、反射的にセバスチャンを威嚇する形になる。





「いえ、それが全く・・・手詰まりなのでここへ癒されに来た次第です。」





「へぇ・・・使えないねぇ・・・君は・・・」





恵梨華の可愛らしい姿に表情を崩し、葬儀屋の声には全く意に介していない。





「貴女さえよければずっとその姿のままで・・・」





セバスチャンは、心底操思ってるかのような表情で、恵梨華に手を伸ばす。





「そんなのやだよ!」





恵梨華は近づいてきた手に、ガブリと噛みつく。





「よしよし。あぁ・・・やっぱりいいですね」





しかし痛みなどまるで感じていないかのように恵梨華を抱きかかえ、胸元に抱き寄せるセバスチャン。





「早く・・・元に戻して・・!」





恵梨華はセバスチャンの胸の中で暴れる。





ほっぺたを軽く爪でひっかいたり、迫ってくる手を足で蹴ったり、尻尾で手を叩いたりしていた。





恵梨華としては本気で攻撃しているつもりだが、猫の力ではセバスチャンを喜ばせることしかできない。





「早く元に戻りたいの!」





そして顔を寄せてきた時、ここぞとばかりにセバスチャンの頬にパンチを連続で叩きこんだ。





しかしセバスチャンは肉球の感触がよほど気持ちがいいのか、わをかけてだらしのない顔で笑っていた。





「そろそろいい加減にしないと・・・ヒッヒ・・・・狩っちゃうよ?」





ふと気付いたら、セバスチャンの首筋に葬儀屋のデスサイズがつきつけられていた。





「おっと。全く無粋な方ですね。まぁ充分堪能させていただきました。また情報収集に行ってきますよ」





「きゃっ」





少し油断していたセバスチャンだったが、そこから一瞬で飛びのき、ドアの前に着地していた。





その時セバスチャンにじゃれついていた恵梨華は空中に放り出されてしまった。





「ふぅ・・・やっと小生のトコに戻ってきたねぇ〜」





「アンダーテイカー・・・」





それを葬儀屋は抱きとめ、胸に引き寄せる。





「それじゃあ執事クン。頼んだよぉ〜?」





「・・・それではまた来ます」





そう言い残し、セバスチャンは消えた。
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