短編夢小説V

□葬儀屋先生
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恵梨華は勉強机に突っ伏し、うなだれていた。





先程、恵梨華の母親に学校の成績について文句を言われていたのであった。





実はその前にも一度文句を言われたことがあり、次に悪かった場合、家庭教師を雇うと約束させされていた。





「家庭教師かー・・・嫌だなー・・・」





今回が二度目だったので、家庭教師は確定してしまったのだ。





そして、母親が言うには明日顔合わせがあると言っていた。





「宿題もあるけど・・・そんな気分じゃないから・・・寝よっと」





そして次の日の夕方頃、母親に言われて仕方なく部屋を片付けていると来客を知らせるチャイムが鳴った。





「はぁ・・・来ちゃったか・・・」





下の階から母親が挨拶している声して、すぐに階段を登る足音が聞こえてくる。





―ガチャ





「やぁ、君が恵梨華ちゃんだね?小生はアンダーテイカー。今日から宜しくねぇ・・・ヒッヒッ」





「こ、こちらこそ宜しくお願いします」





第一印象から、顔が髪で隠れているので、恵梨華は怪しんでしまった。





しかし、声は好みであり、しかも綺麗な銀髪をしていたため、そこに目が釘付けになった。





「さ〜て、それじゃあ君がどの程度なのか見せてもらおうかなあ?今教科書のどの辺りなんだい?」





恵梨華は葬儀屋に、教科書の今日習った場所を開いて差し出した。





「なるほどねぇ・・・じゃあコレをやってみておくれ」





教科書をペラペラと適当に見た後、一枚の問題が記載されたプリントを恵梨華に渡した。





「これは・・・今までの復習的なやつですか?」





「そう、君の能力を確かめたいのさ」





最初は変な人だと思ったが、仕事はちゃんとする気らしい。





恵梨華は言われた通りプリントを解き始めた。





「はい、時間だよォ〜。さあ、小生に見せてごらん?」





時計の長針が半円を描いたところで葬儀屋が恵梨華に終了を告げた。





「ヒッヒ・・・じゃあ、答えあわせをしようか」





軽やかに採点する葬儀屋をドキドキしながら眺める恵梨華。





「ん〜・・・」





「ど、どうですか?」





あっという間に採点が終わり、何か考えているのか首を傾げている葬儀屋。





「あまりにも酷くてねぇ・・・少し教科書とノートを見せてごらん?」





「・・・?こ、これです」





恐らく困った顔をしているのであろう葬儀屋に、今度はノートも付けて差し出す。





葬儀屋は受け取ると、ペラペラと目を通し始めた。





少しして、葬儀屋は困ったように前髪をフサッとかきあげた。





―ドキッ





葬儀屋の隠れていた素顔と、その綺麗な瞳を見た恵梨華はまるで時間が止まったように停止してしまった。





「・・・ちゃん?聞いているのかい?」





「ッ・・・ごめんなさい!えっと・・・な、なんでしたっけ・・?」





ハッと我に返った恵梨華がもう一度見た時には、すでに前髪で隠れていた。





しかしそのお陰で葬儀屋の授業に集中することができた。





「恵梨華ちゃんは先生が板書したことだけをノートに写してるねェ?」





「え・・・はい・・・」





「実は板書していることより、先生が口で説明している方が大事なんだよねェ・・・」





「板書してることをノートに写してるだけじゃだめなんですか?」





「そうなんだよね。板書されるのは、大体教科書に載ってるコトだからねぇ・・・」





「つまり板書されたことはノートに写しても意味ないんですか?」





「そうじゃないんだけどね・・・でもどの部分が重要なコトなのかわからなくなるデショ?」





「うーん・・・じゃ、じゃあ・・・どうやってノートを書けばいいんですか?」





「そうだねぇ・・・それじゃあ、今日はノートを書く練習もしようね」





「練習もってことは・・・他の事もするんですか・・・」





「ヒッヒ・・・恵梨華ちゃんがわからなくなったトコまで戻って勉強のやり直しをしようか」





「わかりました」





こうして葬儀屋と恵梨華の授業が始まった。
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