短編夢小説V
□真実は闇に隠して
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「ふふ・・・シエルやセバスチャンはどんな反応するだろうね〜」
恵梨華はシエルの大きな屋敷を見上げながら呟いた。
「さ〜あ?・・・でもきっと面白い反応をしてくれるだろうね。ヒヒヒッ♪」
葬儀屋はこれから提供されるであろう笑いに、ニヤニヤが止まらなかった。
「よし・・・それじゃあ呼んで見るね!・・・あぁ、笑っちゃだめだよ?バレちゃうから」
いつまでもニヤニヤしている葬儀屋に、釘を刺す。
葬儀屋はゆっくりと深呼吸し、自分を落ち着かせた。
「バレてしまってはつまらないからね」
恵梨華はコクッと頷くと、大きな扉をコンコンとノックした。
ゆっくりと開かれていく扉。
「おやおや、これはこれは。恵梨華さん、久しぶりですね」
丁寧にお辞儀をするセバスチャン。
恵梨華はこれから起こるであろう面白い展開に、胸を高鳴らせていた。
「久しぶり、セバスチャン。シエルいる?」
「えぇ、もちろんですよ。・・・おや?」
セバスチャンの視線が葬儀屋に注がれる。
「美しい・・・・恵梨華さん、この美しい女性はどなたですか?」
セバスチャンはうっとりとした顔で葬儀屋を見つめていた。
恵梨華と葬儀屋はこみ上げる笑いを必死に隠していた。
そんな時、玄関近くをたまたま通りかかったシエルが恵梨華たちに気付いた。
「ん?恵梨華じゃないか・・・珍しいな、僕の屋敷に来るなんて」
ゆっくりと階段を降りてくるシエル。
「あ、シエル、久しぶり〜」
「あぁ、久しぶりだな・・・・ん?そちらの女性は?」
シエルも葬儀屋の存在に気付くと、不思議そうに首を傾げた。
こうしている間にもセバスチャンの衝動は押さえきれなくなっていた。
セバスチャンは葬儀屋の前に跪くと、そっとその手を取った。
「あぁ・・・私はこれほどまでに美しい女性を見た事がありません・・・」
「ブッ・・・・そ、そうなんだ・・・!」
思わず吹き出してしまった恵梨華。
しかし葬儀屋に魅入られたセバスチャンは気付いていない様子だった。
「是非・・・貴方のお名前を・・・」
―ちゅっ・・・
セバスチャンは葬儀屋の手の甲に口付けをした。
「ッ・・・・・!?」
葬儀屋の顔色が一気に悪くなる。
ゾワッと寒気にも似た感覚が、葬儀屋の身体を支配した。
恵梨華は青ざめてしまった葬儀屋を見た途端、堪えきれなくなった。
「あーっはっはっはっはっはっ!」
突然、お腹を抱えて大笑いする恵梨華に、セバスチャンとシエルはビクッと反応した。
「恵梨華・・?どうしたんだ?急に・・・」
「だ、だめ・・・ブフッ・・・ぎゃははははははは!」
涙を流しながら苦しそうに笑う恵梨華。
「セ、セバスチャン・・・・その人・・・テイカーだから・・・・!」
「・・・・・?!」
セバスチャンは目を見開いて驚いていた。
そして慌ててその手をパッと離した。
「こ、この美しい方が・・・・葬儀屋さん・・・?」
みるみるうちにセバスチャンの顔色もサーッと悪くなっていった。
肝心の葬儀屋はというと、セバスチャンに口付けされたショックでまだ固まっていた。
「あっはっはっは!そうだよ、セバスチャン!」
恵梨華の笑いはまだ治まらない様子だった。
するとシエルもフッと不敵な笑みを浮かべた。
「フッ・・・・セバスチャン、お前はそういう趣味があったんだな」
シエルの的確なツッコミに、恵梨華の笑いは更に止まらなくなっていった。
クスクスと笑い続ける恵梨華とシエルに対し、当の本人たちは暫く動けそうになかった。