短編夢小説V

□犯人は銀の死神
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「・・グレ・・・ル・・・?」





昨日店に来たばかりのグレルが。





今朝、遺体となって運ばれてきた。





「嘘・・・・でしょ・・?」





切り刻まれた傷が生々しく残っている。





耐え切れなくなった恵梨華は、その場に崩れ落ちた。





「・・・ぅ・・・・・」





グレルの手を握りながら泣き出す恵梨華。





泣きながら震えていた恵梨華は、突然、ふわりと温かいものに包まれた。





「恵梨華・・・」





哀れむような声でその名を呼んだのは葬儀屋だった。





「アンダー・・・テイカー・・ッ・・・」





再び涙が溢れ出してくる。





恵梨華は葬儀屋にしがみつきながら、葬儀屋の胸を濡らしていった。





「こんな惨いコトを・・・・一体誰がやったんだろうねェ・・」





恵梨華の頭を優しく撫でながら、ボソリと呟いた。





「・・ぅう・・・・・ひっく・・・ぁ・・」





目を真っ赤にしながらも、葬儀屋の言葉が気になって仕方がなかった。





死神であるグレルがそんなに簡単にやられる訳がない。





恵梨華は呼吸を乱しながらも、誰だかわからないその人物への憎悪が湧き上がっていた。





ギュッと恵梨華を抱きしめながら頭を撫でていた葬儀屋だったが、突然スッと立ち上がった。





「赤い死神クンをこのままの姿にしておくのも可哀相だからねぇ・・・」





「綺麗に・・・・してくれるの・・?」





立ち上がる力が残っていないのか、恵梨華は目線だけを葬儀屋に向けた。





「勿論だよ。・・・彼は小生の大切な後輩だから・・・ね・・・」





葬儀屋がグレルを持ち上げると、グレルの生々しい血がボタボタと棺に零れ落ちた。





「大丈夫・・・小生がちゃんと綺麗にしてあげるからね」





「・・・うん・・・・」





―パタンッ





葬儀屋が奥の部屋へ消えていったと同時に、恵梨華は力なく床に寝転んだ。





「・・ぅ・・・・・はぁ・・・・・グレル・・」





その名前を呼んでも、二度と返事など聞けない。





目を瞑れば、グレルとの思い出が次々に蘇ってくる。





それはまるで走馬灯のようで。





失ってしまった悲しみに、再び目に熱いものがこみ上げてくる。





「・・・ひ・・・・っく・・・・・はぁ・・」





どれだけ涙を流そうとも、辛い現実は何も変わらない。





「・・・・・・・」





変わらないと思った瞬間、恵梨華の瞳から涙が枯れていた。





そしてフラフラとしながらもグッと立ち上がる恵梨華。





その視線の先には、ついさっき葬儀屋が消えていった扉が映っていた。





ゆっくりとした足取りでその扉へと向かう。





―キィィィ・・





扉を開けると、検死の真っ最中の葬儀屋がいた。





「ん・・・・恵梨華・・?どうしたんだい?」





恵梨華に気付いた葬儀屋は、手を止め振り返った。





「グレル・・・・どう?」





「ああ、もう少しで終わるトコだよ」





グレルの姿を確認すると、恵梨華は少し驚いたように目を見開いた。





「すごい・・・あれだけあった傷が殆ど塞がってる・・・」





「ヒッヒ・・・ま、コレが小生の仕事だからね」





恵梨華は、そっとグレルの頬に手を当てた。





切なげに細められる瞳。





葬儀屋はそんな恵梨華の姿を黙って見つめていた。





「・・・・ねぇ、アンダーテイカー?」





不意に声をかける。





「ん〜?どうしたんだい?」





「犯人の目星・・・・ついてないの?」





その言葉に、葬儀屋はピクリと反応した。





「小生は裏の情報屋だ。いつも死体から情報を得ている・・・ここまで言えば分かるだろう?」





「誰・・!?」





思わず声を荒げ、葬儀屋に掴みかかる恵梨華。





葬儀屋は恵梨華の行動に驚くが、すぐにフッと笑みを浮かべた。





「まず、犯人は鋭利な刃物を使って彼を殺している」





「でも・・・死神のグレルが人間にやられるなんて事は・・・」





「鋭いね、恵梨華。小生もそう考えていたんだ」





「じゃあ・・・一体誰が・・・・?」
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