短編夢小説T

□悪魔のような死神
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「あの有名なアンダーテイカーさんは一体どんな所に連れて行ってくれるのかしら?クスッ」




どこまでも挑発的な恵梨華。




「ヒッヒ・・・小生行きつけのお店さぁ?」




もう長い間行ってないであろうその行きつけの店。




二人はそのままその店へと向かった。




はたから見れば美男美女。




すれ違う死神達はそんな二人を羨むような目で見ていた。




着いた店はまるでお化け屋敷のような外観だった。




普通の死神なら気味悪がって近寄らないような店だった。




でも、恵梨華は違っていた。




「あら?素敵なお店じゃない」




まじまじとお店を見ながら答えた。




ギィィという音を立てながら扉が開く。




「さぁ・・・どうぞ?」




怪しく笑うアンダーテイカーに導かれ、恵梨華は店の中に入った。




外観よりも不気味な内装。




薄暗い店内から一人の男が出てきた。




「これはこれはアンダーテイカー様、お久しぶりですねぇ?」




死体と見間違えるくらい不気味な男は、二人を席へと案内した。




テーブルの上にはローソクが一本。




ローソクの火がゆらゆらと怪しく動いていた。




それから二人は真っ赤な、まるで血の色をしたワインを片手に楽しそうに話していた。




甘いムードが漂う空間で、二人の会話はというと、




「人間は生にしがみ付いてるのさぁ」




「フフッ・・・どこまでも醜くて素敵じゃない?」




「最後の力を振り絞って、小生達死神の死の宣告から逃れようとするのさぁ」




「あぁ・・・人間の生への醜い執着心・・・血まみれになってもなお生きようと必死なのね・・」




先程から繰り返される話題といえば、人間の死の瞬間や惨殺死体についてばかり。




こんな話を楽しそうに出来る二人はとても不気味だった。




「でもねぇ・・?小生は今ならその人間の気持ちが分かるような気がするんだ」




「・・・?どうしてかしら?」




「君さぁ〜恵梨華。今の小生はいつまでもずっと君の傍に居たいと思ってるんだよぉ?」




キィィという音を立てて、目の前に座っていたアンダーテイカーは椅子を恵梨華の隣にずらした。




テーブルに肘をつき、妖艶な笑みを浮かべ恵梨華を見つめるアンダーテイカー。




間近でアンダーテイカーに見つめられ、恵梨華はドキッとした。




ほんのり頬を赤く染め、視線をそらした。




そんな彼女の様子に気づいたアンダーテイカーは、恵梨華の顎を持ち上げ、




「ヒッヒッヒ・・・どうして目をそらすんだ〜い?」




「っ・・・///」




先程までの冷たい瞳は優しい色に染まっていた。




しばらく見つめあう二人。




甘い、どこまでも甘い雰囲気。




恵梨華は慣れていないのか、もう耳まで真っ赤になっていた。




そして静かにアンダーテイカーの顔が、唇が、恵梨華に近づいてくる。




「んっ・・・」




ちゅ、という音を立てて二人の唇が重なった。




まるで二人は恋人であるかのように、甘い甘い口付けをした。




触れるだけのキスから、徐々に濃厚なものへと変わっていった。




何度も何度も、角度を変えながらお互いの味を確かめるかのようにキスを繰り返した。




そして、はぁ・・・という甘い吐息。




「恵梨華・・・愛してるよ」




まだ唇が触れそうな距離で甘く囁く。




まるで恵梨華は魔法にかかってしまったかのように答えた。




「・・・愛してるわ・・・アンダーテイカー」




震える声で、聞こえるか分からないくらい小さな声で囁く愛の告白。




「ずっと小生の傍にいてくれるかい?」




真っ直ぐで、嘘偽りのない透き通った瞳で見つめて真剣に問いかける。




「・・・」




恵梨華はその質問に言葉で答えず、そのまま口付けをした。








−それから長い年月が過ぎた−




「早く行くわよっ!アンダーテイカー」




「ヒッヒッヒ・・・恵梨華とならどこへでも・・」




今やこの二人は死神界の最強ペアとして謳われていた。




二人の笑顔はどこまでも優しいものに変わっていた。



-END-
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