短編夢小説T

□現代に来てくれた葬儀屋さん
1ページ/2ページ

「私達、もうすぐ結婚するんだね」




幸せそうな笑みを浮かべる恵梨華。




しかし先程から話しかけている男の反応は薄かった。




「あぁ・・・」




考え事をしているのか、楽しそうに話しかけてくる彼女をまるで煙たがるようにしていた。




二人はかれこれ5年くらい同棲していた。




そして来月結婚する事が決まったのだ。




恵梨華は嬉しくて仕方がなかった。




しかし先程からの彼の反応に不思議に思ったのか、彼の顔を覗き込んで問いかけた。




「どうしたのー?」




彼は避けるようにくるりと後ろを向くと小さな声で、




「別れて欲しいんだ」




と言った。




「え・・・?どうして・・・?」




その瞳に涙をためながら震える声で理由を尋ねた。




「ごめんな」




謝るだけで理由すら答えようとしない彼。




そんな彼の腕に恵梨華は泣きながら必死でしがみついた。




「わ、私、何でもするよ・・嫌いな所があるなら言って・・?何でも直すからっ・・・!」




そんな彼女を男はただ冷たい視線で見ていた。




「・・・オレはただ、お前が金持ってるから一緒にいただけだし」




「え・・・」




「それに、結婚する気なんてさらさらねーのに、何でこんな事になってんだよ」




「・・・・」




「ったく、すんなり別れてくれるかと思ったのに・・・マジ気持ち悪いから触んなよ」




強引に腕を振り払い、男はそのまま出て行ってしまった。




一人部屋に残された恵梨華。




あまりの衝撃に一体何が起こったか理解出来ていなかった。




しかし涙は止まらず、頬を伝い首筋から彼女の服を濡らしていった。




「私・・・遊ばれてたんだ・・・」




静まり返った部屋でぼそりと呟く恵梨華。




部屋の静寂に耐え切れず、恵梨華はテレビをつけた。




目は真っ赤に腫れあがり、もう涙すら出ていなかった。




ぼーっと、ただひたすらぼーっと暗くなった部屋でテレビを見つめていた。




「あ・・・これ・・・」




昔見たアニメの再放送がやっていた。




番組名は”黒執事”。




そこに映る男を見てある事を思い出した。




「あ・・・アンダーテイカーだ。私昔好きだったなぁ」




そんな事を呟きながら、アハハ・・と乾いた笑い声を出していた。




「もう・・・寝ようかな・・・」




力なくそのままベットへ倒れこんだ。




「(あの人の匂いがする・・・)」




今はもういない彼の匂い。




そんな状況で眠れる訳もなく、フラフラとおぼつかない足取りで外へ出た。




真夜中の散歩。




外はとても静かで、まるでこの世に一人自分だけ取り残されたように感じだ。




恵梨華は川のほとりに座っていた。




「もう・・・死んじゃおうかな・・・」




独りぼっちになった恵梨華はもうこの世に未練なんてなかった。




両親は恵梨華が小さい時に亡くなっている。




頼る親戚もおらず、施設で育てられた恵梨華。




そんな恵梨華の唯一の支えになっていたのが彼だった。




しかし今はその彼もいない。




恵梨華が死ぬ決心をするまで時間はかからなかった。




一歩一歩、目の前の川に近づいていく恵梨華。




太ももの辺りまで水に濡れた時、突然声をかけられた。




「死のうとしているのかい?恵梨華」




聞き覚えのあるその声。




静かに声のする方に振り向いた。




「っ・・・!」




恵梨華は驚きのあまり息を飲んだ。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ


©フォレストページ