短編夢小説T
□死神を虜にする死神
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カツカツカツ・・・
靴音が響き渡った。
「魂の強奪・・・ですか」
「ウィル!」
「ウィリアム!」
恵梨華とグレルは同時に叫んでいた。
「死神の利権に手をつけるとは、何とも許しがたい。今回ばかりはサービス残業もあえて受け入れるとしましょう」
ウィリアムは、カチャリと音を立てて眼鏡を直した。
「グレル・サトクリフ!」
そう言うと手に持っていたグレル愛用のデスサイズを投げる。
それを受け取ったグレルは満足そうにくるりと回転し、いつもの決めポーズをした。
「イヤッホ〜ウ!ご機嫌DEATH☆」
「皆さん、一つ盛大にぶちかましてください。打ち上げは経費で落としますよ」
「そうよ!天使の好き勝手には・・・させないっ・・・!」
恵梨華は力強く天使のいる塔を見つめた。
そして一斉に黒い煙を斬り始める。
「イーッヒッヒ・・・」
恵梨華はチラリとアンダーテイカーの方を向いた。
まるで楽しむかのようにデスサイズを振るその姿にぞくぞくしていた。
するとグレルがデスサイズで恵梨華に向かって斬りつけてきた。
勿論恵梨華はそれをするりと華麗にかわした。
「あ〜んなヤツの事ばっかり見てんじゃないわヨ〜!」
「べ、別に見てないわよ!」
「ど〜だか〜♪アタシしか見れないようにしてア・ゲ・ル☆」
恵梨華とグレルが戦い始めると、ウィリアムは深いため息をついた。
「グレル・サトクリフ、いい加減にしてください。それに恵梨華、貴方も貴方ですよ」
ギロッとウィリアムに睨まれる恵梨華。
「たまには私の事も見てください」
「え・・・?(そっちなの!?)」
てっきり仕事中に余所見をしていた事を怒られたと思っていた恵梨華は心の中でツッコんでいた。
「ヒーッヒッヒ・・・二人ともそれくらいにおし?恵梨華が困ってるじゃないか」
さり気なく恵梨華の肩を抱き寄せるアンダーテイカー。
そんなアンダーテイカーを敵意剥き出しで睨む二人。
「いくら伝説の死神と呼ばれたお方でも・・・恵梨華だけは渡しませんよ・・・っ!」
「イイ男だからって・・・何でもしていいって訳じゃないのヨ!」
焦る二人を気にする様子もなく、悪びれる様子もなかった。
「さァて・・・後はあの執事君に任せて、小生達は帰ろうかねェ?」
そう言うと恵梨華の手を引きそのまま死神界へ向かおうとするアンダーテイカー。
「ちょっと〜!アンタの家はあっちじゃない・・っ!」
グレルが慌てて声をかけた。
「イーッヒッヒ・・・小生はまだまだやれるみたいだからねェ?現役復帰させてもらうよ」
「っ・・・!」
ウィリアムは思わず息を飲んだ。
そんなウィリアムとは対称的に怒りを剥き出しにするグレル。
「アンタはここで死体相手に遊んでなさいヨ!」
「落ち着きなさいグレル・サトクリフ」
デスサイズを振り回して暴れるグレルをウィリアムが押さえ込む。
「しかし・・・これだけは言わせて貰いますが、恵梨華は死神界のアイドル。例え貴方といえど・・敵は多いですよ」
「なっ・・・!わ、私アイドルなんかじゃないよ!」
慌てて訂正する恵梨華。
しかしそんな声は三人には届かなかった。
「小生は・・・本気だよォ?」
ニヤリと挑発的な笑みを浮かべるアンダーテイカー。
「勿論、私も本気ですので・・・」
「あ〜ら、今日はやけに積極的なのネ?ウィル」
「普段は相手が貴方ですからね、グレル・サトクリフ」
「っ・・・言ってくれるじゃな〜い?アタシだと恵梨華は落ちないとでも言いたいの?」
「違うとでも?」
くすりとウィリアムが笑った。
二人で言い合いしてる隣で、アンダーテイカーは自分の唇に指を当てながら、
「恵梨華〜、小生はずっと人間界に住んでいたんだ。だから死神界に住む所が無くてねェ・・・」
まるでおねだりするかのように可愛く恵梨華を見つめた。
下から上目遣いで見つめられ、ドキドキが止まらなかった。