短編夢小説T
□シンデレラ
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恵梨華がお城に到着する頃にはダンスパーティは既に始まっていた。
誰もが皆、王子様と踊るためにアピールをしていた。
「ンフッ☆王子様、アタシと時を忘れて踊りましょうヨ〜♪」
「何を言っている。王子様と踊るのは、この僕だッ!」
そこにはシエルとグレルの姿もあった。
アンダーテイカーは踊る様子もなく、椅子に座っていた。
「王子様、そろそろ踊られてみてはいかがですか?」
ニヤリと悪魔笑いを浮かべるセバスチャン。
「はぁ・・・小生はそんな気分じゃないんだよ」
手を組みつまらなさそうに答えるアンダーテイカー。
「小生は・・・こういう賑やかなところが嫌いなんだけどねェ?」
「ですが王子様、そろそろ王子様には身を固めて頂かないと・・・」
そんなとき、恵梨華が慌てた様子で入ってきた。
その場の誰もがその美しさに言葉を失っていた。
アンダーテイカーは恵梨華に惹かれるように近づいていった。
「お嬢さん、小生と踊らないかい?」
ニヤリと妖艶な笑みを浮かべるアンダーテイカー。
恵梨華はそのあまりのかっこよさに息を飲んだ。
怪しい光を放っている黄緑色の瞳に見つめられ、恵梨華は恋に落ちていた。
するとアンダーテイカーが跪き、手を差し出した。
恵梨華はその手を迷わず取った。
「悔しいけど・・・あの子、やるわネ」
「あぁ・・・この僕が負けるなんて・・・」
そして二人は優雅に踊りだした。
それはそれは楽しいひと時だった。
恵梨華が夢中で踊っていると、
ゴーンゴーン
それは12時を知らせる鐘だった。
恵梨華はハッと我に返り、急いでその場を離れようとした。
しかし、死神であるアンダーテイカーから逃げられるわけも無く、恵梨華はすぐに捕まってしまった。
恵梨華を抱き寄せ、放そうとしなかった。
そして無常にも12時の鐘が鳴り終えた。
するとパァァという光が散り、恵梨華は元の姿に戻ってしまった。
それを見たセバスチャンは、目に見えないスピードで恵梨華にドレスを着せた。
周りの”人間”はそんな事に誰も気づかなかった。
「え・・・?あの子・・・恵梨華よネ・・?」
グレルはぼそりと呟いた。
「お前は何を言っているんだ、そんな訳ないだろう」
シエルはグレルの言葉を信用していなかった。
「しかし執事君、うまく誤魔化したねェ?」
「お嬢様に恥をかかせるわけにはいきませんでしたので」
二人のそんな会話を聞いていた恵梨華は、頭の中が(?)でいっぱいだった。
「ヒーッヒッヒ・・・さあ、夜は長い、踊りの続きをしようねェ」
アンダーテイカーは何事もなかったかのように恵梨華と踊りを楽しんだ。
こうして恵梨華は、アンダーテイカーと結婚する事になり、幸せに暮らしましたとさ。
-おしまい-