短編夢小説T

□イケメンすぎる問題児
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屋根から屋根へと飛び移り、急いでアンダーテイカーを探す恵梨華。




すると、街の一角がすごい賑わっていた。




「(今日ってお祭だったかな?)」




不思議に思った恵梨華は、その人溜まりに向かった。




そこでは女の子達が騒いでいた。




「(バレンタインデーのイベント?にしては時期が違うよね)」




そんな事を考えながら、ふと女の子達の中心を見た。




するとそこにはアンダーテイカーの姿があった。




「(え・・・?アンダーテイカー・・・?)」




アンダーテイカーの姿を見て、恵梨華の中の何かが切れた。




その瞬間、辺り一帯を恵梨華の物凄い殺気が包み込んだ。




「(私のアンダーテイカーを・・・コイツら全員冥界へ送ってやる・・)」




恵梨華の黄緑色の瞳がキラリと輝いた。




手には恵梨華愛用のデスサイズ。




死神界では珍しい大剣のような形をしたデスサイズだった。




巨大な大剣を片手で持つ恵梨華はさすが死神といったところだろうか。




そんな時、アンダーテイカーは恵梨華の殺気に気がついた。




一般人の女の子達は、何が起こってるのか分からない様子でざわついていた。




”何か変な感じがする”程度なのだろう。




アンダーテイカーは屋根の上に立つ恵梨華を見つけ驚いた。




今まで恵梨華が一度も見せた事のない一面。




いつものような優しい瞳ではなく、狩りを楽しむような冷酷な目をしていた。




そして初めて見る恵梨華のデスサイズ。




二人はパーティで出会ったのだから、もちろんアンダーテイカーは恵梨華のデスサイズを見た事がなかった。




今まで何人の血を浴びたのか、そのデスサイズは赤い光に包まれていた。




「(・・・恵梨華・・・っ!)」




今にもその場の女を皆殺しにしそうな恵梨華の元に一瞬で近づくと、アンダーテイカーは恵梨華を抱きしめた。




突然アンダーテイカーがいなくなった事で、女の子達は混乱していた。




(あ、あれ!?アンダーテイカー様は!?)

(先程までここにいらっしゃったのに!)

(貴方が隠したんじゃなくて?)

(まぁ!失礼ね!そういう貴方こそ怪しいもんですわ!)

(なによ!)




何やら争いを始めた女の子達。




アンダーテイカーはそんな事を気にも留めず、恵梨華を落ち着かせるために囁いた。




「馬鹿な真似はおよし?小生はそんな恵梨華見たくないよ」




アンダーテイカーの言葉でハッと冷静さを取り戻した恵梨華。




そっと手に持っていたデスサイズをしまった。




「さあ、店に戻ろうか」




「う、うん・・・」




店についた恵梨華は酷く落ち込んでいた。




柩の中で体操座りをして俯く恵梨華。




「恵梨華・・・?」




名前を呼ばれ、恵梨華はそっと顔を上げた。




目の前には恵梨華の事を心配そうに見つめるアンダーテイカーがいた。




もちろん前髪は上げられているため、アンダーテイカーの顔がはっきりと見えた。




「っ・・・///」




近くで見る事にまだ慣れていないのか、恵梨華は顔を真っ赤にした。




「小生はねェ・・・恵梨華一筋だよォ?」




「うん・・」




「あんな子達の事、な〜んとも思ってないんだよ?」




「うん・・」




「恵梨華・・・?」




「うん・・」




恵梨華の機嫌が中々直らないので、アンダーテイカーは不思議に思った。




しばしの沈黙。




そして重々しい雰囲気の中、恵梨華が重い口を開いた。




「アンダーテイカー・・」




「なんだい?」




「その・・やっぱり前髪下ろして・・・」




潤んだ瞳で見つめられ、アンダーテイカーはクスリと笑って前髪を下ろした。




「まったく、我侭なお姫様だ」




言葉とは裏腹に優しい笑顔を見せるアンダーテイカー。




恵梨華はその日、アンダーテイカーが顔を隠している理由が分かった気がした。




−もう誰にも見せないでね、貴方の顔を見る事が出来るのは・・・私だけなのだから



-END-
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