短編夢小説T

□悪い子にはお仕置きを
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次の瞬間、恵梨華の体を襲ったのは痛みではなく温もりだった。





「小生が怖いかい?」





アンダーテイカーは恵梨華を包み込むように抱きしめていた。





「・・・」





「ヒッヒッヒ・・安心おし?小生はそんな事しないよ」





アンダーテイカーの手にはもうデスサイズは握られていなかった。





「さあ、お仕置きも終わりだよ。小生に・・約束の口付けをおくれ・・?」





「アンダー・・・テイカー・・・」





「もう二度と一人で出歩いちゃ・・・いけないよ?」





「うん・・・」





恵梨華はアンダーテイカーのいつもの優しい瞳に安心して、そっと唇を重ねた。





「でも・・・」





「ん〜?なんだい?」





「アンダーテイカーは・・・本当は私を殺したいんじゃないの?」





悲しそうな表情で涙を浮かべる恵梨華。





「さっきのは・・・お仕置きだって言ってたけど・・・本心なんじゃないの・・・?」





「・・・」





アンダーテイカーは眉を寄せた。





「恵梨華、よくお聞き?」





恵梨華と視線を合わせるかのようにその場にしゃがみこんだ。





「小生はね・・・恵梨華の全てが欲しいんだ」





髪をかき上げ真剣な眼差しで恵梨華を見つめた。





「恵梨華を殺して永遠に独り占めしたとしても・・・所詮手に入るのは体だけさ」





恵梨華の髪を愛おしそうに撫でる。





「小生に・・・恵梨華の笑顔を奪う事なんて・・・できないよ」





「アンダーテイカー・・・」





「それに恵梨華が死んだとしても・・・小生が死神に転生してあげるからねェ・・?ヒッヒッヒ」





「っ・・・!」





「その時は永遠に・・・小生の傍にいてくれるかい・・?」





まるでプロポーズのような言葉。





恵梨華は耳まで真っ赤にしてこくこくと頷いていた。





甘い雰囲気が漂う店内。





そんな中、恵梨華はふとある事を思い出した。





「・・・あれ?そういえばアンダーテイカー、仕事は?」





「・・・!」





きっとほっぽりだして来たのだろう。





アンダーテイカーは酷く慌てた様子でドアへと向かった。





「あのままじゃあ・・・お客さんが可哀相だからねェ・・」





名残惜しそうに恵梨華を見つめ、そっとその場を後にした。





店に一人残された恵梨華。





「(仕事中にも関わらず来てくれたんだ・・・)」





恵梨華は先程アンダーテイカーが落としていった帽子をキュッと抱きしめていた。





「(愛してるよ、アンダーテイカー・・)」





恵梨華は優しく微笑み、その帽子を抱きしめながら柩の扉を閉め、眠りについた。















一方その頃アンダーテイカーは。





(あの人かっこいい・・・!)

(キャー!今こっち向いたわ!)

(あぁん、あんなかっこいい人がいただなんて・・!)

(目が癒される〜〜!幸せ♪)





街中の女の子の黄色い声に困り果てていた。





帽子を忘れたアンダーテイカーは顔がうまく隠せていなかった。





その美貌に酔いしれない女などいない。





何人もの女たちに声をかけられアンダーテイカーは深くため息をついた。





「(ああ・・・恵梨華ごめんよ・・・帰りの時間が遅くなりそうだ・・・)」





早く仕事を終わらせて一刻も早く愛しい恵梨華の元に帰りたいアンダーテイカー。





しかしその愛しい彼女が帽子を抱きしめている事などアンダーテイカーは知る由も無かった・・・。



-END-
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