短編夢小説T

□死神に恋した悪魔
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セバスチャンは思わず目を見開いた。





「(その好きという意味は・・・葬儀屋さんに対する感情とはまた別の・・・)」





少しだけ悲しい表情を浮かべるセバスチャン。





しかし愛しい恵梨華に抱きつかれ、微笑が零れた。





「それじゃぁ、早速行って来るね!あ・・・まだ誰が店を訪れたか分からないや」





「焦ってはいけませんよ。昼間、少し遠くから店の様子を伺うのです・・・」





「それで入った人間を殺せばいいんだね!」





「えぇ・・・顔は綺麗なままに・・・ね?」





悪魔にとっては人間を殺すというのは何の罪悪感もない事なのだろう。





彼らにとってそれは、ただの食事であるのだから。





「(さぁ葬儀屋さん・・・派手に恵梨華を拒絶してくださいね?)」





既に恵梨華は部屋を後にしていた。





「(私は傷ついた恵梨華を慰めるだけ・・・でいいのですから)」





蝋燭の灯火だけが宿る部屋で、セバスチャンは尖った歯をむき出しにしながら笑っていた。













それから恵梨華は、毎日のように葬儀屋に訪れる人間達を殺していった。





昼間はアンダーテイカーの店に入る人間達を確認し、真夜中にその死体を店の前に置いた。





その怪事件はロンドン中を騒がせていた。





勿論女王も黙ってはいられない。





女王の番犬であるシエルに、この事件の解決を依頼した。





「セバスチャン。アンダーテイカーの店に行くぞ」





「御意」





シエルとセバスチャンは馬車でアンダーテイカーの店に向かった。





「いるか?アンダーテイカー」





「ヒッヒッヒ・・・やあ伯爵、そろそろ来る頃だと思ってたよ」





アンダーテイカーはぬるい紅茶とクッキーを用意し、カウンターに座った。





「最近毎日小生の店の前に置かれる惨殺死体について・・・だろう?ヒッヒッヒ」





「あぁ、その話が聞きたい」





「ではアレを・・・と言いたい所だけどねェ〜、今回はタダにしてあげるよ」





アンダーテイカーはビーカーに入った紅茶を一口飲んだ。





「小生の店を訪れた人がねェ・・・次の日、お客さんとなって小生の店の前に置かれているんだ」





「・・・どんな状態なんだ?」





「顔は綺麗なモノさ・・・体のほうは・・・ヒッヒッヒ」





アンダーテイカーは怪しい笑みを浮かべた。





それだけでシエルの血の気が引いていった。





「それとね・・・そのお客さんにはある共通点があるのさ・・・」





「どんな共通点があるんだ?」





「まるで小生に贈り物をするかのように・・・リボンが付けられているのさ」





「・・・趣味が悪い贈り物だな」





シエルは眉を寄せた。





「それともう一つ・・・あの殺し方は人間業じゃない・・・」





ガタッ・・・!





その言葉を聞くと、シエルは思わず立ち上がった。





そして勢いよくカウンターを叩いた。





「人間業じゃない・・・だと・・・!?」





「ヒッヒ・・・伯爵も気をつけるといい。こうして小生の店を訪れてしまったのだからねェ・・・?」





その言葉にシエルは口角を上げて笑った。





「なら都合がいい。僕を殺しに来た犯人を捕まえればいいのだからな」





「明日、伯爵が小生のお客さんになってない事を・・・祈ってるよ」





シエルとセバスチャンはそのまま店を後にした。





「いいか?セバスチャン。犯人が来たら、殺さず僕のもとに差し出すんだ」





「イエス・マイロード」





しかし犯人がシエルのもとに訪れる事はなかった。





「どういう事だ・・・!?」





シエルは少し焦った様子で机を叩いた。





「セバスチャン、もう一度奴の店に行くぞ」





「御意」





二人は再びアンダーテイカーの店を訪れた。
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