短編夢小説T

□感情移入
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キキーッ・・





ガシャーン・・・!





凄い音と共に強い風が吹いた。





体に痛みは感じない。





恵梨華は不思議に思い、おそるおそる目を開いた。





「え・・・・・」





目の前に一人の男が立っていた。





長い銀色の髪。





ヒラヒラとした長めのコート。





ヒールの高いブーツ。





そして手には大鎌のデスサイズ。





恵梨華は信じられない様子でただただ男の後姿を見ていた。





振り下ろされたデスサイズをガシャガシャと音を立てながら引き抜く男。





そしてゆっくりと恵梨華の方を振り向いた。





「大丈夫だったかい?」





黄緑色の瞳。





斜めに付けられた傷。





形のよい唇。





そして毎日のように聞いている聞き覚えのある声。





その男はどこからどう見ても、恵梨華の大好きなアンダーテイカーだった。





「う・・・そ・・・・・・・・・」





恵梨華は少し体を小刻みに震わせていた。





「恵梨華・・?」





アンダーテイカーは言葉を失っている恵梨華に一歩一歩近づいた。





恵梨華は驚きのあまり、尻餅をついた。





「いたた・・・」





腰を擦っている恵梨華の目の前に、アンダーテイカーは目線を合わせるようにしゃがんだ。





「驚かせてしまってごめんよ・・・?」





心配そうな瞳で見つめられる。





「あ・・・あなたは・・・・・・・もしかして・・・」





顔を真っ赤にしながら必死に声を振り絞った。





「アンダーテイカー・・・ですか・・・?」





「ヒッヒッヒッ・・・そうだよォ〜?」





頭が混乱する。





トラックに轢かれたショックでおかしくなってしまったのだろうか。





「(夢?これは夢なの?今恵梨華は病院のベットで重症なの?)」





そんな事を考えていた。





「それより恵梨華・・・ちょっと小生と一緒に来てくれないかい?」





アンダーテイカーは恵梨華の手を引き、歩き出した。





「あ、あの・・・どこへ・・・?」





「小生は死神なのさ」





「で、でも死神は引退して葬儀屋さんをしてるんじゃ・・・?」





「・・・あれは漫画やアニメのお話だろう?ヒッヒッ」





ますます頭の中が混乱していく恵梨華。





「小生は昔も今も、ずっと現役だよォ〜?」





それから恵梨華はアンダーテイカーに色々教えてもらった。





死神は普段、人に姿を見せてはいけないこと。





黒執事はアンダーテイカーやグレルなどの実在の死神を元にして作られた作品であること。





魂回収リストに恵梨華の名前があったこと。





そしてアンダーテイカーは恵梨華を愛してしまい、犯してはならない罪を犯してしまったこと。





「アンダーテイカー・・・これからどうなるの・・?」





「さァて・・・どうなるんだろうねェ〜・・・」





それはアンダーテイカーにも分からない様子だった。





アンダーテイカーの事を心配で気づかなかったが、恵梨華は今愛しのアンダーテイカーと手を繋いでいる。





それに気づいた恵梨華。





みるみるうちに顔が真っ赤に染まっていった。





「(真面目な話で気づかなかったけど・・・アンダーテイカーが恵梨華を好き・・・?!)」





思わず繋いでいた手を離し、両手で顔を押さえた。





「(ってか実在してたの!?驚きのあまり気づかなかったけど、イケメンすぎる・・!)」





アンダーテイカーは突然立ち止まってしまった恵梨華の肩を抱いた。





そして心配そうに恵梨華の顔を覗き込んだ。





「どうしたんだい?」





アニメや漫画のように顔が隠れていないアンダーテイカー。





その綺麗な顔が丸見えである。





「っ〜〜〜〜!!!!」





恵梨華は声にならない叫び声をあげていた。
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