短編夢小説T

□感情移入
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「ヒッヒッヒッ、今更恥ずかしがる事でもないだろう?」





アンダーテイカーはニヤニヤしながら恵梨華を見つめている。





「い、今更って・・!会ったの初めてだよ?!」





「・・・小生は、ず〜っと君を見ていたよォ〜?」





”死神は普段、人に姿を見せてはいけない”





恵梨華の気づかない所で、アンダーテイカーはずっと恵梨華を見ていた。





今までの自分の行動を思い出し、恥ずかしさのあまり耳まで真っ赤に染まっていった。





「毎晩、小生に口付けをしてくれていたねェ〜?ヒッヒッヒッ」





楽しそうに話すアンダーテイカー。





恵梨華は下を向き目を瞑り、固まってしまっていた。





「小生は恵梨華のそんな一途な所に惚れてしまったんだよォ〜?」





「う・・・嬉しいけど・・・恥ずかしい・・」





「この髪も・・・小生の為に何年もかけて伸ばしてくれていたねェ・・」





愛おしそうに髪の毛に触れるアンダーテイカー。





恵梨華の長く綺麗な銀髪がさらさらとアンダーテイカーの指をくすぐった。





恵梨華は気まずくなり、話を変えた。





「と、ところで・・・どこに向かってるの?」





「ヒッヒ・・・勿論、死神派遣協会本部だよォ〜?」





アンダーテイカーはおもむろに恵梨華を抱きかかえた。





「さて・・・小生にしっかり掴まってておくれ?」





恵梨華は言われた通り、アンダーテイカーの服をギュッと掴んだ。





するといきなり体がふわりと宙に浮いたような感覚が襲ってきた。





「(と、飛んでる・・!)」





恵梨華は街を見下ろしながら驚いていた。





「もうすぐ死神界に入るからね」





「う、うん・・!」





恵梨華は目の前を見た。





まるで異空間への入り口のように、景色が歪んでいる。





恵梨華は覚悟を決めたように、息を呑んだ。





暫く異様な道が続いていた。





そして光と共に街が現れた。





「・・・おやおや、もう着いてしまったねェ〜・・」





アンダーテイカーは少し残念そうな顔をして恵梨華を降ろした。





それから暫く歩くと、大きな建物が見えてきた。





「ここが死神派遣協会の本部だよォ〜」





恵梨華はその建物を見ながら、内心不安でいっぱいだった。





そんな恵梨華の心情を察したのか、アンダーテイカーが恵梨華を安心させるように言った。





「大丈夫、小生が守ってあげるよ」





アンダーテイカーの優しさを感じる。





恵梨華はそんな優しさに包まれて、安心した様子だった。





コンコン―





アンダーテイカーはとある部屋の前に行くと、扉を叩いた。





「どうぞ」





中から声が聞こえてくる。





それを聞いたアンダーテイカーは扉を開いた。





中にはソファーに腰掛ける偉そうな人。





否、偉そうな死神がいた。





「ほう・・・その娘が・・」





その死神は恵梨華の事を見ながら言った。





「まぁそこに腰掛けてくれたまえ」





恵梨華とアンダーテイカーは、言われるがままにソファーに腰掛けた。





「しかし・・・伝説の死神と言われた君が・・まさかこんな小娘をねぇ・・?」





「恵梨華を侮辱するならいくら協会長でも許さないよ?」





アンダーテイカーは協会長をギロリと睨んでいた。





「・・・我々死神は人間の生死に関わる事は許されない、それは分かっているだろう?」





「ああ・・分かってるさ。小生はどんな処分でも受ける気だよォ〜?」





「これは君だけの問題じゃない。崇高なる死神をかどわかした罪は重い」





その言葉にアンダーテイカーは思わず立ち上がった。





「恵梨華は関係ないだろう?!小生が勝手にした事なんだ!」





「伝説の死神を誘惑した・・・この意味が分かるかい?恵梨華君」





「ご、ごめんなさい・・」





協会長に睨まれ、恵梨華は震える声で謝った。





「彼ほど美形で優秀な死神は他にいない・・・私も彼を狙っていた一人なんだがね?」





「気色悪い事を言わないでおくれ!?小生にそんな趣味はないよ!」
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