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□炎がさらった
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のどが やけるように いたい
(ああ、違う かな)
(ほんとうに 焼けてるの、かも)
くろとは あつく ないのかな
彼と僕を取り巻く炎。足元に横たわる彼。赤い水溜まり。きれいな。いのちの色。
この色を酷くきれいだと 思ったのはこれで二度目。
一度目とは絶望的に違う二度目
だってもう止まらないんだ。
彼から流れ出るいのちは。
くろ と
頭のどこかが冷えていた。(どうしてだろう、だって今僕らは炎に包まれてる のに)
なんだかよくわからない。
涙はでなかった。
(おかしいな)
だって自分はかなしい はずで。
無器用に あやしてくれる手が 涙を拭ってくれるやさしい指が もう 僕には届かないから?
おまえはよく泣くな。
玄冬が 口癖のように言っていた言葉。(言わせてしまっていたのは 僕だけれど)
困らせたいわけじゃなかったけれど、そんな顔も好きだった。(好き だった、じゃなくて。好きだよ。今までと変わらず、、これからも)(これから?なんて そんなもの 僕にあるの?)
わから ない よ
くろと
炎は涙をさらっていった。それから痛みも
(けれど これだけは)
遺された、たったひとつの 全て
この想いだけは
何にも 誰にも
お願いだから
「奪わないで」
願う声すらさらわれた
(そもそも祈るかみさまがいないけれど!)