+
□まちがいさがし
1ページ/2ページ
まちがいだらけの
すべてが 突然 で
白銀にはわからなかった。わかるはずもなかった。
だって彩凪自信もわかっていなかったのだから。
なんだかものすごく珍しいものを見ている気がする。
白銀が目の前で固まっていた。いつも静かな瞳が、いまは驚いたように開かれて、揺れている。自分に伸ばされていた手もぴくりとも動かない。
どうしたの?
口に出そうとして、なんだか詰まってしまう(あ れ?)
違和感を感じて瞬きを一度。
はたり。
なにかが、あふれて こぼれた。
ほんのすこし失敗した。
いつものように罪人(とあの人がいっていたから、そうなのだろう。とくに興味もなかったけど )を『救った』。
ためらいも不満も抱かない。
救世主と呼ばれるのもあの人がきれいな声で『救って』おあげなさいと囁くのも自分がつくった血溜まりを踏みつけて(ふみにじって)(まるで なにもなかったみたいに)歩いていくのも。
慣れきった動作でそれを、救った。(で 合ってるよ ね?)(だってあのひとが)
そのとき頬に、何かが降りかかって。
ゆびさきで拭うと思った通りのただれた赤。(あーあ)(いつもならこんなヘマはしないのに)
それは嘘のように、あたたかかった。
(きもちわるい)
そういや 自分の瞳も こんな色だったっけ
べつによかった。
人に救世主と呼ばれ自分の名前を誰もが呼ばないことも、称える声の裏で自分がけして少なくない呪いの言葉を被るのも。
とても簡単だ。
そうするだけであの人やアイツが生きられるのだから。
生きられる世界が、つづいてゆくのだから。