茨の涙

□一章 爛
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人に与えられた特別な力、望み手に入れた力は人に何をもたらしたのだろう。
そして、特に強い力を手にしてしまった人はどうなってしまうのだろうか?

「特別な者にしか興味がなくてね。僕の生き方は屈折していると言われるからね、手段は選ばないよ、爛」
 二人の少年が建物の屋上で何か話をしている。
「退屈しない生活の保障をしてくれないか、それで手をうつから。曳士の父の会社は企業のトップだって聞いてるからさぞかしいい生活が待ってるんだろうな」
 爛と呼ばれた少年は期待しながら曳士に返事をする。
「その分ちゃんと働いてもらうからね」
十六歳になって爛と曳士がスクールを卒業。
この世界にはある人物によって特別な能力が伝えられた。
浮いたり、力を放ったりと個人個人で違う能力ながらも今では生きていく術である。
能力者の養成学校がたくさんあり、そこに入る。
十六歳までの子供の義務であるがゆとりのあるものだけでいい。
そこで主に教養、実戦を学び大人になる。
「俺を退屈させないでくれ」
スクールをトップの成績で卒業した爛、入学当初から彼はほかの生徒の的だった。
曳士には劣るものの高い長身、とても男とは思わせない中性的な小奇麗な顔、目は滅多に見られない銀色で髪は黒の長髪。
頭もよく、能力も現代の機器では測定できないほどの容量を持っている。
「善処するよ」
爛の後に続いて二位の曳士。
父が能力者の研究組織のトップ企業の社長で自分もかなり珍しい能力を持っているというのに爛に執着する。
爛が褒めたほど綺麗な黒目で、猫毛で茶色の短髪。童顔なため眼鏡を使用しているという話。
一週間後、爛は曳士の父が経営しているという会社に入社する。
顔合わせのため会議室に行く途中の廊下で曳士と話をする。
「噂に名高い大きな会社だな、迷いそうだ」
 ガラス張りの窓とクリーム色に染まった廊下は気分を害すようなものではなかった。
「僕は父の秘書的立場になるけど爛はこの会社のナンバー二にあたる四凱将の頭になってもらうんだけど」
「四凱将?」
「能力の高い者の上位四人が選ばれるんだけど、先日一人仲間内でもめて殺されたんだ。主な仕事は外務と凱将以外の人間の指導」
「外の揉め事の処理ねぇ、気が進まんな」
外では能力者同士の争い事が絶えない。
それを押さえてきたのは警察とか政府、そして余裕のあるこの会社である。
「前まで頭だった紫貴さん、紅一点の蓮華さん、先日の殺しをした気性の激しい玲さんがこの部屋でお待ちです」
気が付けば会議室と書かれた部屋の前に立っていた。
「頭は変える必要はないじゃんか、生きてるんだろう?」
「四凱将の中で一番強いものが頭になるのはきまりですから」
曳士が両開きの扉を開けると二人の男と一人の女が広い会議室の真ん中の席に座っていた。
椅子が三十ほどあり、それに合わせた組み立て式の机が十五ほど部屋の角を囲むようにして並んでいた。
「紫貴以上の力を持つっていうやつの登場か」
「嘘かほんとか」
「確かめなきゃいけねーよな」
そういって一人の男が立ち上がり、爛に向けて光の玉を無数に飛ばしてきた。
「器物破損はしないでね、爛」
「わかったよ」
その光の玉が爛に当たる瞬間にすべての玉が止まってパンッと音を立てて消えてしまった。
「何なの?今の技」
「へぇ、おもしれー」
「やめておけ、お前では返り討ちにされる」
攻撃を放った男が今度は本気だとばかりにまた攻撃しようとした時だった、何も言わずに見物していた男が止めた。おそらく攻撃してきた男が玲で止めた男が紫貴。
「本日から四凱将になる爛です、よろしく」
爛は心にもなくそう言って頭を下げた。
「紫貴だ、よろしく」
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