茨の涙

□五章 人王と使い
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三人が別々の道でもいいと言った。
どんなに懐かしくても思い出してはいけない、今は後悔ばかりの日々。
あなたはどこにいるのか、遠い旅に出てしまった。
いつかくる別れ、泣くことなんて子供のすることだから涙を流せなかった。
人は悲しくて願いばかりを追う生き物・・・嫌いなのに・・・どうして・・・?

「レライエ、英霊と使いってどう違うんだ?」
なんとかばれずに曳士から休暇をもらった爛と神那、そしてレライエ。
見事な脅しで同行することになった神那は全員のまとまった荷物を持ち、レライエは使いがいると書いてある本を見ている。
一行は要塞都市ライオーネに来ていた。オーレグ国の首都であるエスカの中心部にある爛たちの組織の南に位置する上空に浮いた都市である。
「たいして違いはないよ。あえて言うなら、使いは元人間」
「元はって、いつから仕えてるんだ、使いは?」
「初代からだよ。使いいわく恩返しみたいなものだよ、初代が殺されそうになってた使いたちを助けて、どうしてもって言うから王が術で不老にし、力も与えて文字通り創り変えたんだ」
「どういうことだ?」
「わかりやすく言うと融合させて、三人に分裂させ、いろいろな特典をつけたって感じだよ」
初めは人間だった者たちが人王のすばらしさに気付き、永遠に仕えることを許してもらったのだ。
「すごかったんですね、初代の人王は」
「王にはそれの血が濃く入っているから、初代を超えることができるぞ」
「それは無理だな、レプリカはオリジナルを超えられないもんだ」
自分でも珍しく正論を言ったなと満足に浸る爛。
「目的地、観光地としても有名なセントルーアリア城に到着だよ」
ライオーネの中心部に位置するセントルーアリア城は人王縁の地として有名で、かつてこの城に人王が住んでいたという伝承がある。
レライエの話では本当で、初代が住んでいたもので、千年経った今でも色がとれなく、美しいまま残っている。
よく見る普通の赤と白で色付けされた人が数百人住める大きさを誇る城で、たくさんの人が観光客として出入りしている。
「この地下にいるんですね?」
「ああ。昼下がりのお城見物だ。でも問題は、地下までどうやって行くかだな」
「瞬間移動はだめだよ、センサーがはたらいてるから。それに一度来たとこじゃないとイメージができないでしょう?」
「そうだな、どうすれば・・・」
瞬間移動は一度来たところならイメージがしやすく簡単に移動できるが、初めてのところだとなかなか難しい。
「これは、英霊の力を借りるしかないな。ただやみくもに壊して入れれば簡単でいいんだが、そんなことしたら曳士にばれそうだし、人王というのもばれる気がする」
「無難ですね」
「王、お薦めはザガンだよ」
「そうだな、なんてったってレライエの兄貴だからな。そうすると、どこで召喚するといいと思う?」
爛は周りをキョロキョロと見回した。
周りは人だらけ、そんな公衆の面前で英霊の召喚などしてしまえばかなりやばい状況になる。
「決行は夜にしよう、ホテルのトイレでも使って呼んだらどう?」
「それいいかも」
レライエは冗談のつもりで言ったのだが、いい案だと爛は早速ホテルに向かった。
「早いうちに呼んどいて損はない」
レライエの言葉を真に受けて高級な誰もいない部屋のトイレに隠れて召喚を行うことにした。
「神々の頂点に君臨せし、我が身に宿る英霊よ、力に同調し我に力を貸せ、召喚ザガン」
少し狭いトイレの中、召喚は成功した。
爛の目の前に一人の男が姿を現す。
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