茨の涙

□六章 罪と罰
1ページ/6ページ

親などいない、はっきりと脳が伝えているのになぜか断定ができない。
自分を、人王を生んだ親なのだから。
本人は自分達の子が人王と知らなかったはず、普通の人間だった。
どうして今ごろ、死んだと思ったのに。
あの時確かに・・・・・・
考えれば考えるほど瞳が熱い、誰か・・・・・・
「・・・・・・爛?」
気付けば爛の顔色をうかがう煉士の姿があった。
「王・・・・・・?」
レライエが爛の服の袖を引っ張った。
「だいじょうぶだから・・・・・・あ、・・・・・・」
「王!」
「爛!」
「爛さん!」
混乱してあまり状況をうまく理解していない爛が倒れかけたところをレライエが抱きとめる。
両目を両手で押さえながらも気絶した。
「旅行してきて疲れてるんだ、ちょっと休ませよう」
「そうしましょう」
「うん・・・・・・」
煉士がついてきてと言わんばかりに早足で誘導して、爛の部屋では遠いからと、誰にも使われていない休憩室に入る。
そこには布団が敷かれており、冷蔵庫や洗濯機といった生活に必要なものが全て揃っていた。
レライエは爛をその布団に寝かせて、部屋のことを良く知っている煉士から濡れたタオルをもらうと、爛の髪を分けてタオルを額にかぶせた。
神那がそばで見守る。
「爛はだいじょうぶなのかい?」
「たぶん。昨日も同じようなことあったんだ」
爛が使いに返事を返した時、熱いと言って目を押さえたて転がった。
「昨日って、どうしてそんなことが?」
「それは、使いが話かけてきて、答えた時に何かわからないけど急に・・・・・・あ、・・・・・・」
「そんなこがあったんですか?」
曳士には内緒だったんだということをレライエは忘れて話していた。
神那もその場にはいなかったため知らないことだ。
「隠さなくてもいいよ、だいたいどこに行くかは見当がついてたんだ」
さすがと言っていいのか、曳士は使いを探しにいっていたということをわかっていたのだ。
「熱いって言って目を押さえて倒れたんだよ」
わかっていたなら隠す必要もないと判断したレライエは躊躇うことなく曳士に話した。
「昔からある爛の病気とかじゃないのかな?」
「そういうのいくつかあるんだけど、目を押さえて熱いって言ったのは今までないよ」
そう言ってレライエは爛の両目を覆う様に手を置いた。
「こうやって冷やしてみるんだけど、熱いと言ってるわりにはこちらに熱さが伝わらないんだよ。それに効果は望めない」
今は普通に眠っている爛だが、目が赤いとか、火を発火したということは全くない。
「昨日になって現れた新たな病気とか?」
「そうだったら、病を司る英霊が警告を発してくる」
「それがないんですね?」
レライエはただ頭を縦にふった。
「じゃあ親のことで何か嫌なことを思い出したとか?」
「そうかもしれない。でもあの時は親など関係ないはずなのだが」
「僕は人王に親などいないと思っていたんだが、ちゃんといるようだね」
「今来ているのは・・・・・・?どちらにしても王の親は私が殺したんだ」
声も出なかった、そのため少しの間沈黙が続いた。
「レライエが爛さんの親を殺した?」
「どうしてそんなことを?」
とても信じられないことだった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ