茨の涙

□八章 望みの果てに
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蓮華が造ったに間違いないと思った。
だが同時に一つの疑問も浮かぶ。どうやってあれを造ったのだろうか?
「どうやってあれを造った?」
本能的に一番気になることを聞くのが人間である。
どうしてあそこを襲い、本物を殺すように命令してあったとかいうことは後回しだ。
「決まってるじゃない、力よ」
「そんなことできるわけないじゃないですか」
「蓮華、俺のクローンはある事情からできないようになっている。本当のことを言え」
嘘とも思えなかったが、爛は力でクローンが造れるなどどう考えても有りえないと判断した。
「あなたが人王だからでしょう?ちゃんと聞いてたわよ、あなた達の会話」
「そうか、じゃあ聞いてしまったお詫びにクローン造りの種をあかしてもらおうか」
「だから力で造ったって言ってるじゃない」
「それが信じられないから爛さんは聞いてるんですよ」
「もしかしてお前新種のこと隠してたな?」
新種とはまだ見つかっていない新しい能力のことある。
「正解よ、今この世界でこの力をもつ者はきっと私一人よ」
蓮華は親指と人差し指でパチンッと指を鳴らした。
すると蓮華の横に瞬間移動をして現れた爛の姿があった。
「また爛さんが・・・・・・」
「どういうことだ!」
「この子が一番の成功作よ。私の新種の能力は闇の影、その人本人の形があれば本物に近いクローンだって造ることができる。誰にだって闇というのはあるもの」
「そんなこと可能なんですか?爛さん」
爛は少し考えた。
そんなことで自分にほとんど近い存在を操ることができるのだろうか。まして人王のクローンは奇跡でできるようなものじゃない。
英霊にだってそんなことできるやつなんて・・・・・・
「可能かもしれない、英霊でもできそうなやつがいるし。じゃあその疑問はとりあえず解決っていうことにして、なぜあそこを狙って俺を殺すように命じてあった?」
「あそこを狙ったのはほんの偶然よ、そうしたらあなたが護衛にくるじゃない?丁度いいと思って」
「俺が邪魔なわけか」
「そういうことよ」
二人の間に力の亀裂が走った。
電気のようにピリピリと、廊下が戦場になる。
「なぜこんなことをなさるんですか?蓮華様」
「決まってるじゃない、あなたのためよ、神那」
その言葉と同時に爛のコピーがすごい速さで本物に襲い掛かってきた。
「神那、誘拐されるなよ」
「爛さん?」
神那には何を言っているのかわからなかった。
爛はその場が狭いことに気付き、場所を変えることにし、瞬間移動をした。偽者もそれに続く。
「ちょっと待ってください!」
「行かせないわ」
神那も爛を追いかけようとしたが、蓮華に捕まってしまった。
「離してください。俺のためとか言ってましたよね、だったらあのクローンを爛さんにけしかけるようなことしないでください」
「それはできないわ、だって私、あなたが欲しいもの。そのために邪魔な爛には消えてもらうの」
蓮華が自分のことを欲しいと言っている。
冷静に考えて、今何をすべきか。
「何で、俺を・・・・・・?」
「人王の爛も欲しいけど、あの子はぜんぜん従ってくれそうにないから、あなたなら見込みがあると思って」
理解はできる、この人が何を言っているのか。
でも正直言って興味がない。
「好きなのよ、神那。あなたの心、魂には穢れが感じられないの」
一方爛と偽者は?
「偽者なんだから、とっとと死ね!」
「そっちこそ死ね」
組織のビルの屋上に来ていた二人はとめどなく動いている。
もはやきりがない肉弾戦で戦っている。
当然手や足で攻撃する際には切っ先に力を込める。
「いいか、レプリカはオリジナルには勝てないんだよ」
「関係ない、ご主人様のためにお前を殺す」
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