茨の涙

□九章 希望と想い
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具体的に神とは何だろう?
力の頂点を極めた者、高貴な者、人それぞれだろう。
その人が崇める者が神だとしても、違う人から見れば神ではないかもしれない。人とはそんなに弱いのだろうか・・・・・・
では、神に何を願う?
必ず叶えてくれるとは限らない、でも叶えてくれるかもしれない。
人は見えない神に何を期待する?

「爛、この書類に目をとおしておいて」
「わかった」
あれから三ヶ月、爛の体調回復も早く、一時はどうなるかと思われたオーナーの就任。
曳士と葵一の父を追い出した後、ハッキングしてきた組織に盗られたデータは強制的に曳士が回収した。
組織の建物も新しく改装し、隣に新社を建て、さらに大きくなった。
今では爛はこの組織のオーナーで、神那が秘書を務めている。
「曳士、神那はどこに行った?」
「そういえば、朝から見ないね」
曳士は能力者開発チーフからの変わりはなく、四凱将の制度もなくなってはいない。
爛はオーナーを兼ねて四凱将もやっている。
「近頃様子がおかしいんだよな、あいつ。なんか落ち着かないみたいで」
「僕達の下克上が成功に終わってからだね」
「王が何かしたんじゃないの?」
レライエは曳士の手伝いをたまにしている。
いろいろと爛に頼まれていることの調べ物があるので、書庫にいることが多い。
「俺は何かした覚えはない」
「自分でも気付かないうちに酷い事言ったんじゃないの?」
「言ってない!」
「それにしても、王、声は聞こえなくなったのか?」
曳士たちが下克上を起こした日、見事成功したパーティーを開いている中、爛は倒れた。
以前から聞こえていたものの、悪意のある声ではなかったためそのままにしておいた。でも、あの時は、声が聞こえて、倒れた。
「周期的に聞こえる。今は何も聞こえないけど」
「性別とかは、わかるのかい?」
「たぶん男」
ただ名前を呼ぶだけで、何が目的かわからない。
でもやはり、悪意はない。
「私も心当たりのある者を調べているけど、何がなんだかわからないよ」
「神那、探してくる」
どうもいつもいるはずの人間がいないと落ち着かないのか、爛は立ち上がると、スタスタとオーナールームを出て行った。
「レライエ、護衛はいいのかな?」
「いらないって聞こえたから」
とりあえず中にいないことはわかっている。
となれば、外の近辺。
「まったく、気に入らないことがあるなら言えばいいのにな」
組織の傘下にある、繁華街に来てみても、それらしい人影はない。
平日だというのに活気づいている店には数々のおいしい物が並んでいる。
少なからず、爛にも好物があり、買って帰ろうかと悩む。
「何だ?変な感じがする・・・・・・」
店の品を見ながら歩いていると、急に場の空気が変わった。
この場の空気、どこかで・・・・・・
「誰も気付いていないのか」
周りの人たちを見てみても、変わった様子もなく平然としている。
今この場で何が起きているのか?
「ここの人たちを巻き込むわけにはいかないな」
爛は走り出し、繁華街をぬけて、大きめの自然公園に来た。
しばらく立ち尽くし、沈黙がながれる。
「いいかげんにしろよ!何もしてこないなら、こっちから行くぞ」
爛がその場に結界を張り、攻撃をしようとした時だった、
「爛さん・・・・・・」
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