茨の涙

□十章 星への祈り
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誰?何を話している?
「レライエはどうして大きくならない?」
「教えないよ」
深い意識の底、一人はレライエだとわかったが、もう一人は男としかわからない、誰が話している?声だけ聞こえて、周りは真っ暗だった。
「どうして子供の姿を好む?」
「好んでなんかないよ、大人になりたくないだけ」
「だから、その理由を聞きたいんだけど」
どうしても聞きたいのか、男の声は困っていた。
「どんな姿でいようと私の自由だろう」
それから何も聞こえなくなった。
ゆっくり目を開けると、そこにはレライエのかわいい寝顔があった。昨日の眠った状態そのままで、追加するならレライエが爛に抱きついて眠っていること。
爛は夢だったのかとため息をついた。
「・・・・・・ん、王?」
そのため息が聞こえたのか、目をこすりながらレライエが起きた。
「レライエはどうして大きくならないんだ?」
夢と同じ質問をしていることはわかっている。でもこれは前から気になっていたことで、夢にまで見たのなら聞いておくべきだろうと爛は思った。たとえ答えてくれなくても。
「聞きたいの?王」
レライエは少し笑いながらどうしてもかと爛に聞き返した。
「俺、何かおかしなこと聞いたか?」
「違うよ、昔同じことを聞いてきた奴がいたから」
爛はさっきの夢を思い出す、今言った第三者の言い方がレライエの口の悪さを物語っている。ということは・・・・・・
「もしかして・・・・・・華都貴とか?」
「どうしてわかったの!?」
何も話していないのに、どうして知っているのかと驚きの目で見るレライエに爛は夢で聞いたことを話す。
「本当に人の気を探るのうまいんだから、王は。隠してたわけじゃないからいいよ、話す」
昨日亜月と会い、感情の不安定だった爛に神格と人王の関係を話したためか、つい気になって華都貴と関係のありそうなレライエの記憶を眠っている間に盗み見たということになる。
「華都貴には教えないって答えてたんじゃ・・・・・・」
「爛だから教えるんだけど、聞きたくないの?」
英霊の時の癖がぬけてないのか、レライエは爛のことを普段は王と呼ぶ。これは、人王だからということで尊敬の意を込めて呼んでいるのだ。だが今となっては英霊でなくなったので王と呼ぶ必要はない。建前というのがあるのだろう、私情のときなどはレライエも爛と呼ぶ。
「聞きたい」
「理由は二つあるんだ。一つは大人になると、貪欲になるから。子供の時はいらないと思っていたものが欲しくなってしまうんだ、大人は」
「そうかもしれない・・・・・・」
爛は納得してしまった。
大人になると、子供の頃の大切なものを捨てていく感を覚える。体は子供でも、心は大人のレライエもせめて姿だけはと形を残しているのだ。
「二つ目は、爛とスキンシップがとれる。昔は一つの理由だったけど、今となってはこの姿でいて良かったと思っているよ」
「それって理由なの?」
「だって嫌でしょう?朝、目が覚めたら大人な私が目の前にいるんだよ、さっきの場合」
爛は想像してみた。
いつも思わず抱きしめたくなるような姿をしているレライエが大人だったら?
「抵抗があるかも・・・・・・」
「嫌でしょう、小さいと甘えられるし、いろんな意味で特するよ」
「今更大きくなられても困るからな」
「爛をおとすために大きくなるっていうのもいいかも」
きっとこのまま大きくなるのだから、さぞかし美形になるに違いない。
「だめだね、レライエに変わりはない」
「さすが爛だね、そういうところ大好きだよ!」
そう言ってレライエは隙をついて爛のほっぺにかるくキスをした。
「レライエ!」
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