オリジナル小説 2

□二 零の意味
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コードナンバー零、五年前に造られた変則遺伝子の一人で、何かしら変身するはずの零たちなのに変身しなかった不良品。
いつまで経っても変身しないため捨てられたのだが、当時気付かなかった異常なことがつい最近わかったため研究者たちはコードナンバー零を血眼になって探しているらしい。
それは・・・・・・ほかの零に比べて変則遺伝子数が以上に多いこと。
「ちょっとロンちゃん、待っててば」
急ぐ龍華の腕を引っ張り、待てという天鷺。
「急いでるんだ、放してくれ」
「何があったの?」
「・・・・・・水蓮が・・・・・・そう、一人で次の任務しに行くって」
今思いついたような苦しい言い訳だった。ここで天鷺に水蓮がさらわれたと言って自分も行くと言われると水蓮の秘密がばれるかもしれない。そのことを考えると天鷺を連れていくことはできない。
「嘘ばっかり、ロンちゃん置いて水蓮が任務に取り掛かるわけないじゃない。それにその手紙、香蒼さんから送られてきたものでしょう?」
「・・・・・・わかった。言うよ、水蓮がさらわれたんだ」
「ええ!誰に?」
 変なところで鈍感だなと龍華は呆れた。
「送り主に決まってるだろう。まさかあそこまで水蓮にこだわるなんて思ってなかった」
「ねえロンちゃん、水蓮には何か秘密があるの?」
「・・・・・・なんでみんなして水蓮に秘密でもあるのかとか問いただすんだ、そんなに水蓮はおかしいか?」
別に零だという目印があるわけでもないのに、どうして水蓮ばかり疑うのだろう。
「だってロンちゃんが誰かをそばに置くなんて前からおかしいと思ってたのよ」
「どういうことだ?」
「だってロンちゃんって可愛くない子供だったもの。いつも訓練ばかりで、どんな人が近づいてこようと気を張り巡らせてそれを解くことは決してなかった」
天鷺とは三歳からの付き合い、そして水蓮とは七歳からの付き合い。
「それが水蓮といる時は気を張り巡らせてないって?」
「そうよ。どうして・・・・・・もしかしてロンちゃんが執着する水蓮って・・・・・・零なの?」
どうしてこうも零に結び付けようとするのだろう。勘がいいのか悪いのかわからなくなってくる。
だが、天鷺の言っている零は普通の零のほうだろう。
「執着・・・・・・してるわけじゃない。ただ、あいつは絶対に僕を裏切らないから」
天鷺の聞いていることの答えにはなっていなかった。
裏切らないのは天鷺も同じ。
「ロンちゃん!私が零になったらそばに置いてくれる?」
「何言い出すんだ?」
「言ってみただけ・・・・・・ねえ答えてそばに置いてくれる?」
誰もが零になれるわけではない。優れた遺伝子を持ち、科学者達によって作りだされた変則遺伝子を体が受けつけるかどうか。それによって零になれるかどうか決まる。
「どうだろう」
はっきりとしない曖昧な答えを残し、龍華は走っていった。
「ロンちゃん!」
なぜ零にこだわる?
そんなにいいものだろうか?
「どこだ、水蓮!」
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