オリジナル小説 2

□五 龍華・水蓮編
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血が熱くて、指が溶けるかと思った。
何も見えなくなるかと思った。
無意識とはとても恐ろしいことだと知った。

「水蓮・・・・・・?」
「な・・・・・・ぜだ・・・・・・零は・・・・・・変身できないはずだ」
龍華は下ろされた。
目にしたのは水蓮の右手がナイフの刃に変わり、その刃がナンバー四に刺さっているところ。
しかも急所らしく、血が止まらない。
「どうしてでしょうね。変身できたことより、こうやって躊躇することなく刺せたことが不思議です」
ズブッと鈍い音をたて水蓮は刃を抜いた。
「お前は・・・・・・狂気だ・・・・・・俺よりも・・・・・・」
ナンバー四は倒れた。
龍華が脈をみるが、急所に刃をうけて生きているわけがない。
「怪我をさせてしまいましたね」
水蓮はかがみ、自分が引っかいてしまった龍華の手を見た。
「これぐらいいつものことだし、だいじょうぶ」
かすり傷だった。血が滲み出ているがすぐ固まってしまうだろう。
「水蓮・・・・・・?」
いつの間にか水蓮の目から涙が流れていた。
どさくさにまぎれて水蓮は龍華を抱きしめた。
「・・・・・・少しこのままでいてください」
変則遺伝子がざわめく。
あの時変化して初めて自分が何かわかった気がする。
狂気、そう言われてことに何の反感もなかった。
それでもいいと思ったから・・・・・・
「帰りましょうか」
「うん」
二人は家に帰り、すぐ暖まるために風呂に入り、寝た。
次の日、クリスマスイブにあたるその日、とんでもないことが起こった。
「水蓮がいない・・・・・・?」
「はい、朝からいないみたいで、どうやら夜中にでも出て行かれた感じでした」
水蓮がいない。
一人だ、また一人になった。
静かなほど落ち着いていた。
もう戻ってこないかもしれないのに。
「どうにいったんだよ、水蓮」
とにかく探すことにした。
水蓮がどこに行くかなんて知らないが、まだ近くにいるかもしれない。
龍華はこの前にみたいに襲撃に遭うかもしれないのでいろいろと準備をし、玄関から出ようとしたときだった。
「あれ?」
ガラス戸に黒い人影が見えてので水蓮かと思いバンッとドアを開けた。
残念ながら水蓮ではなかった。
黒い服を着た中年のおじさんだが、顔が怖い。
「誰?」
「すっかり大きくなったな、龍華」
名前を知ってる、ということは・・・・・・
「おや旦那様、何か用事がおありで?」
メイドが旦那様と呼ぶ人物、龍華の父親しかいない。
「なにしにきた?」
「親に向かってその挨拶はなんだ。せっかく迎えにきたのに」
 生まれてから子供をほっておいたやつが親といえるか。
「迎えにきた?」
「そうだ。お前には我が企業で働いてもらう。そのためにいろいろな訓練をさせてきたんだ、強くなったと言っていたよ、天鷺が」
「天鷺も入れたのか?」
だから最近ここにこなかったのか。
「熱心でな、お前のために強くなっているそうだ。お前は強くなる、さあ、くるんだ龍華」
父が掴もうとした龍華の腕は残像を残し、龍華は軽い身のこなしで父の股下をスライディングでぬけていった。
「嫌だ、いかない。今は忙しいんだ」
 龍華は走って街のほうに行ってしまった。
ここまで迎えにきたということは無理にでも連れていくということ。簡単に父が諦めるはずがない。だから捕まるわけにはいかない。
「水蓮、どこにいった?」
一番近い街から、路地裏、そこら辺の廃墟、見逃すことなく一日中探し続けた。
何も言わずに出て行った水蓮。
メイドの話だと、部屋の暖かさから考えて夜中の内に出て行った可能性が高いという。
何があったんだ。
「探し物は見つかったか?」
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