オリジナル小説 2

□六 どんな痛みを受けようと
1ページ/5ページ

花が散る瞬間とはこんな感じだろうか。
睡蓮の花がとても綺麗に咲いてたからつけた名前。
だからこんなにも花が散る瞬間のイメージが離れないのだろうか。
いつもそうだ、水蓮が致命傷を受ける瞬間は花が散るイメージがする、もう戻らず、死んでしまうかのように花は散るのだ。
何度も何度も・・・・・・

スブッと鈍い音をたてて小刀がぬけた。
その反動で水蓮は床に滑り落ちた。
「水蓮、しっかりしろ、すぐ病院に・・・・・・」
水蓮はかろうじて意識があった。
刺されたところから血が止まらずに服に染みていく。
「だめですよ・・・・・・いつも言ってるじゃないですか・・・・・・病院は・・・・・・だめだって・・・・・・」
「あっ・・・・・・」
そうだ、いつも怪我をしたとき自分が何をしているか忘れるところだった。
水蓮が怪我をする時は気が動転して正しい判断ができない。
いつだって怪我した水蓮が自分で処置するかのように言うんだ。
「あくまで応急処置にしかならないんだからな」
龍華は触れるか触れないかの距離で水蓮の傷に手を添えた。
「天鷺、どういうつもりだ?」
 血が服に染み込まなくなった。
「ロンちゃん、どうしてそいつばっかりなの?私のが付き合い長いし、ロンちゃんのためにいろいろしてきたのにどうして水蓮ばっかりなの!」
「いろいろって・・・・・・僕のために天鷺は何かしてくれた?勝手なこと言わないでくれるかな、僕は天鷺に何かしてもらったことないよ」
「してるよ。今だってロンちゃんのために強くなってる、私、本当にロンちゃんが好きなんだよ」
「お前は何もしてくれなかったじゃないか!あの家から抜け出させてくれさえすれば少しは変わってたかもしれない。結局は自分の力で抜け出した。水蓮が突破口だったんだ」
「・・・・・・かったの、零ならよかったの?」
「なにを・・・・・・?」
「零なんでしょう、水蓮は。血が止まっちゃうなんて人間ができることじゃないもんね。まして零でもできる人なんていないかもしれない。水蓮は特別な零でしょう?」
「人間じゃないとか言うな。水蓮だってすきでこんな遺伝子持ったわけじゃない!」
「そうよね。でも変則遺伝子が選んだんでしょう、水蓮を。いいよね、何にでも変化できる零って」
「水蓮は・・・・・・」
 怒りにまかせてすべて言おうとすればいつかぼろが出る。ここは冷静にならなければと龍華は言葉をつまらせた。
「あ、わかった。水蓮、コードナンバー零なんでしょう。最近その零に異常なことが発見されて科学者達はコードナンバー零を探してる。五年前ってちょうど零が一人廃棄されたって聞いた。ロンちゃんに会ってロンちゃんが大事で変身できるようになっちゃいました?ロンちゃんしかもういないんでしょう」
「・・・・・・そうですよ」
「水蓮!」
ばれてもよかったのか、水蓮がコードナンバー零だと。
「特別か、いいよね。それならロンちゃんも捨てるわけにはいかないもんね。零は、コードナンバー零は世界を脅かす危険分子だって言ってた。世界征服できるんだよ、ロンちゃん」
「どういうことだ?」
そんなこと聞いたこともないといった顔で天鷺をみる龍華。
「あれ、知らないの?じゃあ教えてあげない」
「天鷺!」
 世界征服って、零の水蓮にそんなことできるのか。
「そんなにいいの、水蓮が」
「前にも言っただろう」
「ずるいよね。ロンちゃんしかいないってことでロンちゃんの逃げ道ふさいじゃってるんだもん」
「・・・・・・べつに龍華様だけ逃がすことはできますよ。私は一生科学者の目から逃れられないから・・・・・・私が勝手に龍華様を縛り付けてるだけです」
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ