茨の涙

□十章 星への祈り
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「朝ご飯食べよう」
ソファーから立ち上がったレライエはこの部屋と廊下をはさんだところにあるキッチンに爛を誘導した。
「レライエ、神那は?」
「そういえば・・・・・・」
レライエを追いかけるようにソファーから立ち上がった爛はふとした疑問が頭をめぐった。
神那がいない。いつもであれば、レライエとの会話中でも時間になれば起こしに来る役目の人間がこない。
「爛、書置きがあるよ」
それでも朝ご飯は作られていた。そして一緒に一枚の書置きが。
「えーと、探さないでください、神那」
紙にはただそれだけもことが書いてあった。
「ばかか、あいつは。何があったんだ?」
「この朝食の温度を考えると、今日の三時がいい時間帯かな」
現在午前六時、朝食は冷たかった。そのことからレライエはすぐに計算をして、神那が出て行った時間に予想をつけた。
「あいつの行くところなんて・・・・・・」
「私にも心当たりがない」
「そういえば、俺、神那のこと何も知らない・・・・・・」
考えてみれば、爛が拾う前のことを詳しく神那に聞きただしたことがない。
もしかしたら、義理の家族とかいたかもしれないのに。
「探してみるか、最初に出会ったところとか」
「私的に華都貴がかかわっていると思われる」
「どうして?」
「なんとなく」
近頃の神那の様子がおかしい原因を爛は知らない。自分が原因だとは知る由もない。
「わかった、亜月の居場所はどこだっけ?」
「確か、このあたりだよ。高級マンションがたくさんあるところ」
爛は何で知っているんだとレライエに問いたかったが、あえて聞くのをやめた。
「じゃあ行こう」
個人的にはレライエと華都貴の関係を知りたい爛だったが、レライエが言いたくなさそうだったので、何も問わなかった。
そして二人は高級マンションの並ぶ、街の外れに来た。
「どれ?」
「さあ?」
見渡す限り、三十階建てのマンションが二十はある。たいした部屋数ではないにしてもこの中からあいつらの本拠地を探すのか?
「簡単に気を探られないように結界を張ってるよ」
「こういう時こそ、邪眼じゃないのか?」
爛はそう言って目をほんの一瞬閉じ、邪眼を瞳に出現させた。
「綺麗だね、王の邪眼・・・・・・」
レライエは目をそらすどころか、じっと爛の邪眼を見つめた。
「正視できるんだな、レライエ」
「そうみたい、王の邪眼と私の邪眼は近いものがあるのかもしれない。見える?王」
爛はゆっくりと体を回転させ、亜月か華都貴の気を探った。
邪眼は見にくいのも見ることに長けている能力でこういう時に威力を発揮する。
「どうしてこの街を中心に神那の気も探ったのに見つからない?」
「私も今から探してみる」
レライエも爛と同じく邪眼を開く。そして、目を閉じ、気を探る。
能力者の気というものは探る本人より探りたい人の力が下なら、より見つけやすい。神那の場合、二人より能力が下であるにもかかわらず、見つからないということは、おかしい。
「見つからない・・・・・・。でも、亜月と華都貴の気はわかったよ」
「とにかく、レライエの勘はよく当たる、あいつらの家に乗り込んでみて、問い詰める」
「そうだね」
二人は亜月と華都貴の気を感じた正確な位置をわりだし、部屋に向かった。
「鍵がかかってるよ」
レライエが乗り込む気満々で部屋の扉に手をかけても開かなかった。
「結界じゃなく、鍵とはなめられたもんだな」
「壊す?」
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