鬼灯の冷徹

□Family
1ページ/2ページ

「鬼灯様ってお母さんみたいだね。」
「そうだね。」
「家族ごっこしたいね。」
「うん。鬼灯様と家族ごっこしたい。」

獄卒のみんなからお母さんみたいと思われている鬼灯は現世に行って出会った、座敷わらしの一子と二子に家族ごっこをしようと迫られようとしていた。

ダダダダダダッ!!

ガシッ!!

「どうしました?一子、二子。」

どこかの誰かさんのおかげで溜まりに溜まった書類を見つめながら、優しい声色で双子と対話する鬼灯。
しばらく話していると、唐突に双子が言った。

『家族ごっこしよう』

「家族ごっこ…ですか?」
「うん。」
「鬼灯様はお母さん。」
「待ちなさい。私は男ですし、まず家族がどのようなものか分かりませんよ。」
「普段通り。」
「元々、お母さんみたい。」

うーん、と悩みだしてしまった鬼灯。そんな彼らのもとへとやってきた一匹の犬。

「鬼灯様ーっ!」

ドスッ!

もふもふ…

「シロさん、体当たりはよくありません。」
「ごめんなさぁい…」
「分かればよろしい。で、何の用です?」
「遊びに来たよ!」
「ちょっと役不足だね。」
「うん。役不足。」
「なんかヒドイこと言われてるよ!?」

さっそく双子の酷評を受けたシロは余程ショックだったのか、どこかへ走り去ってしまった。

「私の偏見ですが…家族というものは、父・母・子・ペットだと思っています。」

この発言に獄卒たちは鬼灯様って、わりとファンタジーな世界を想像していそうだと思った。

「仮に私が母親をやるとして、父親は誰です?」

これにはさすがの双子も困ってしまった。ようやく出た答えは、

「やっぱり閻魔大王かな。」
「うん。閻魔大王しか思い浮かばない。」

"失敬な!!"

バァンッ!!

バァンッ!!

「開けた扉を同じように閉めるな!」
「何か聞こえた気がしますが、気のせいですかね?」
『ねずみ。』
「見苦しい物体でしたね。さぁ、話の続きをしましょうか。」
「勝手に進めるな!朴念仁っ!!」
「はい、負けです。お帰りください。」

扉をガンガンと叩く、名目上鬼灯の恋人らしい白澤が遠路遙々やってきたのだ。
そこで双子は嫌々ながら、鬼灯に提案をした。

「……あのスケコマシさん…」
「嫌だけど…」
「私は願い下げです。閻魔大王の方がまだましだ。」

ガチャリ…

はぁ…、とため息をつき、渋々といった表情で双子を見つめ、どうしても家族ごっことやらをしたいという純粋な瞳を見て、いよいよ鬼灯も諦めて扉を開けた。

「一子と二子からお願いがあるそうですよ…」
『…』
「ん?どうしたのー?」
「やっぱり嫌だ。」
「スケコマシさんがお父さんは嫌。」
「だそうです。お引き取りください。」

ドスッ!ドスッ!

鬼灯の金棒を受けた白澤はモザイクでもした方がましなほどになっていた。
そして、脳内では毛皮だけ剥ぎ取りたい、とこの場において全く関係のないことを想像していた。しかし、双子にとって父親がいないというのはおそらく悲しいであろうから、妥協してもらおうと思う。

「一子、二子。」
『どうしたの?』
「私もあの白豚が夫というのはあまりいい気はしません。しかし、あなた方に父親がいないのは私の心が痛みます。どうか妥協していただけませんか?」
「分かった…」
「妥協する…」

快く…とはいわないまでも、了承をしてくれた。仕方なく白澤を連れて、ちょっとしたスペースへとやって来た。

「白豚さん。やりますよ、家族ごっこ。」
「お母さん、だっこして!」
「お母さん、おんぶして!」
「はいはい、順番ですからね?」
『はーい!』
「一子ちゃんは、こっちに来ない?」
「うんっ…!」

双子をそれぞれ上手くあやす鬼灯と白澤。
他の獄卒たちはその光景を微笑ましく見ていた。だが、やっぱりこの二人なので、言い争いや少しばかり派手な喧嘩を繰り広げながらも、楽しげにしていました。

「白澤さん、一子と二子をお願いします。私は夕食を持ってきますから。くれぐれも変なことはしないでくださいね?」
「分かってるよ!」
『いってらっしゃい!』

「いってきます。」

去っていった鬼灯を眺めていた白澤にやたら鋭い双子はこう放った。

「お父さんはお母さんが本当に好きなんだね。」
「遊びすぎはだめだよ。お母さんが悲しむから。」
「はは…うん、控えなきゃね…」

そんなこんなで1日が終わり、双子を寝かしつけた鬼灯と白澤は今日のことを振り返っていた。

「ねぇ、鬼灯?」
「ん…?どうしました…?」
「ごめんね?寝てたかな?」
「大丈夫ですよ?」
「意外に楽しかったよね?家族ごっこ。」
「えぇ…そうですねぇ…思ったよりも楽しかったです。」
「鬼灯…本当に…僕と家族にならないか…?」
「ぇ…?」
「こどもが無くても、鬼神と神獣でも、地獄と天国だろうがかまわない。家族になろう?」
「白澤…さんが、いいのなら…喜んで…」
「ふふっ…愛してるよ、鬼灯?」
「愛してますよ…白澤…」
「反則だ、ばか…!」

こんな二人の話を聞いていた双子は両親にバレないように密かに微笑んだ。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ