鬼灯の冷徹
□そんな鈍感な君が好き!
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突然だけど、僕は女の子が大好きなはずだった。あんなことがあるまでは…
「やだぁ〜、白澤様ったらぁっ!」
「冗談がお上手なことっ!」
「そんなことないよぉ〜?みぃんな、女の子は大好き!」
ってな感じでいつものように両手に花で街を歩いていた。
天女やサクヤ姫はもちろん可愛い。でも、女の子の獄卒だって負けじと可愛い。
僕の周りには黄色い声とそれから…
「なぜこんなところにいるんですか。さっさと豚箱に帰れ!!」
なぁんて怒号と共に、ものすごい勢いで重たい金棒が飛んできた。
「ちょっと!女の子たちに当たったらどうすんのさ!?」
「あなたが地獄に来ないで、天国の豚箱で大人しくしてれば、絶対に当たることはないんですけどね!」
「うるさいな!この朴念仁っ!」
「はぁ…とっとと帰りなさい。見逃してやりますから。」
ひょいっ、と重たいはずである金棒を軽々と担いで、颯爽とその場を去っていった。
「もぅ!白澤様、お怪我はありませんか?」
「うん!慣れてるから、全然平気〜!」
「そう?」
「そうそう!ほら、早く行こう?」
「えぇ…そうですわねっ!」
このときはまだほんの少しだけ、違和感があっただけだった。
あの颯爽と去っていく後ろ姿に見惚れていた、そんな事実はどこか認めたくなかった。
「はぁー…」
「どうしたんですか?白澤様。またフラれたんですか?鬼灯さんに…」
「は…?なんで鬼灯が出てくるのさ!」
「無自覚っすか…」
桃タローくんの言葉にどこか引っ掛かるところがあった。
鬼灯が出てきたこと、フラれたということ。
確かにたまーに、ホントたまーに女の子にフラれたっていう事実はあるけど、決して鬼灯が好きでも告白した訳でも無いのに、なぜフラれたなんてことを言われるのだろうか…
「ってことがあったんだけどさ、お香ちゃんはどう思う?」
「無自覚、かしら…」
お香ちゃんにも桃タローくんと同じ、全く同じことを言われてしまった。なぜかは分からない。でも、僕の足は勝手に鬼灯のもとへと向かっていたのだ。
「で、お前はどう思う訳?僕には、二人の話に鬼灯が出てきたことが不思議すぎる!!」
「知りません。とっとと帰りなさい。閻魔大王が仕事を溜め込んでいたせいで、仕事が山積みなんですから。」
そう言った鬼灯の目元には深いクマができていて、明らかに顔色が悪かった。
「たまには休めよ?頼まれた薬と…疲労に効く薬置いとくからな?」
「えぇ…って、は?」
別に鬼灯が好きな訳でも無く、心配な訳でも無かったが…慈悲程度に置いてきてやった。
それが間違いだった…